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【余命三年時事日記】2343 どんたく三重弁護士会B 2018年2月1日

【余命三年時事日記】2343 どんたく三重弁護士会B 2018年2月1日

ソース:2343 どんたく三重弁護士会B 2018年2月1日
    http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/02/01/2343-%e3%81%a9%e3%82%93%e3%81%9f%e3%81%8f%e4%b8%89%e9%87%8d%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a2/

2343 どんたく三重弁護士会B
 
 集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
 ttp://mieben.info/archives/topics/435/

 1.集団的自衛権とは、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」である。従前、歴代政府は、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないとしてきた。

 2.日本国憲法は、平和的生存権を確認し(憲法前文第2段)、戦争放棄、戦力不保持及び交戦権の否認を規定する(憲法第9条)など、徹底した恒久平和主義の理念を掲げている。戦争と武力紛争、そして暴力の応酬が絶えることのない今日の国際社会において、日本国民が全世界の国民とともに、恒久平和主義の理念に立脚し、平和的生存権の実現を目指す意義は極めて大きく、重要である。

 恒久平和主義の理念に立脚し、平和的生存権の実現を目指す意義に鑑みれば、自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであるとした従前の政府の憲法解釈は、現在もなお合理性を有している。

 3.ところが現在、政府は従前の憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認しようとしている。しかしながら、集団的自衛権の行使は、恒久平和主義の理念を定めた憲法前文、第9条に反する。

 また、集団的自衛権を行使することは憲法上許されないとする確立した憲法解釈は、憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を課されている国務大臣や国会議員によってみだりに変更されるべきではない。さらに、確立した憲法解釈を変更することは、憲法に違反する政府の行為を無効とし(憲法第98条)、政府の行為が憲法に制約されることとした立憲主義に反するものであって、到底許されない。

 4.よって、当会は、憲法の諸原理を尊重する立場から、政府が集団的自衛権の行使に関する確立した憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認することに、強く反対する。

 2014年5月14日
 三重県弁護士会 会長 板垣謙太郎

 特定秘密保護法制定に反対する会長声明
 ttp://mieben.info/archives/topics/430/

 政府は今臨時国会において、特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」という。)の成立を目指し、平成25年11月26日に衆議院本会議で本法案の強行採決がなされた。当会は、これまでも秘密保全法制の制定に反対してきた。反対の理由として、@「特定秘密」の範囲が広範かつ不明確であること、?「特定秘密」の指定が行政機関の長により恣意的になされうること、?適正評価制度によりプライバシー権、思想信条の自由の侵害のおそれがあること、?国民の知る権利が侵害され、民主主義の根幹を揺るがせる事態となること等の問題点を指摘した。

 しかし、以下に述べるように、このたび強行採決された法案では、当会が指摘した問題点の根本的な見直しはなされていない。基本的人権、国民主権原理を始め、憲法上の諸原理と正面から衝突する多くの問題点を孕んでいることは、これまでの秘密保全法制法案と何ら異ならないのであり、当会は、特定秘密保護法の制定に強く反対するものである。

 1@「特定秘密」の範囲が広範かつ不明確である。

 まず、法案は「特定秘密」として指定する範囲を、「別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」としている(3条1項)。そして、別表では「防衛に関する事項」、「外交に関する事項」、「特定有害活動の防止に関する事項」及び「テロリズムの防止に関する事項」を列挙している。

 しかし、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれ」は極めて抽象的な判断基準にとどまり、どのような情報が指定されたかを検証する手立てが本法案には規定されていないため、実質的に無限定に等しい。

 また、別表の「防衛に関する事項」は自衛隊に関連する事項が網羅的に列挙されており、「外交に関する事項」は「その他の安全保障に関する重要なもの」が広く対象になっており、「特定有害活動の防止に関する事項」や「テロリズムの防止」についても、「特定有害活動」、「テロリズム」の定義が不明確で、拡大解釈される可能性がある。このままでは、違法秘密や疑似秘密(政府当局者の自己保身のための秘密)が特定秘密として指定される危険性がある。

 更に、本法案が漏えい対象とする特定秘密自体が広範かつ不明確であることは、過失や独立した共謀、教唆、煽動をも処罰の対象としていることとあいまって、本法案の罰則規定は、犯罪と刑罰を予め具体的かつ明確に定めることを要請する罪刑法定主義(憲法第31条)に違反する疑いが強い。

 2.?「特定秘密」の恣意的・濫用的な指定がされる可能性がある

 次に、法案は「特定秘密」の指定に関して、「特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるもの」とし(18条1項)、その「基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、我が国の安全保障に関する情報の保護、行政機関等の保有する情報の公開、公文書等の管理等に関し優れた識見を有する者の意見を聴かなければならない。」(同条2項)としている。

 しかし、18条については、「優れた識見を有する者」の意見を聴いて決められるのは抽象的な運用基準でしかなく、実際に行われる個々の秘密指定については、これをチェックする機能はなく、恣意的な秘密指定がなされ得ることに変わりはない。

 加えて、特定秘密の指定は、通算して30年まで延長できるうえ、さらに内閣の承認を得ればそれ以上の延長が可能とされている。このように、本法案は、限界の不明確なまま広範な領域にわたる政府情報を長年月あるいは半永久的に秘匿することを可能にするため、政府の恣意的・濫用的な運用が可能となる。

 3.?適正評価制度による個人のプライバシー権侵害の可能性がある。

 次に法案は「特定秘密」を取り扱う者の管理を徹底するための手段として、行政機関の長による適正評価の実施(適正評価制度)を導入している。(12条)。そして法案は「適正評価は、適正評価の対象となる者について、次に掲げる事項についての調査を行い、その結果に基づき実施するものとする。」とし(12条2項)、調査対象事項として「特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項」(12条2項1号)、「犯罪及び懲戒の経歴に関する事項」(同2号)、「情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項」(同3号)、「薬物の濫用及び影響に関する事項」(同4号)、「精神疾患に関する事項」(同5号)、「飲酒についての節度に関する事項」(同6号)、「信用状態その他の経済的な状況に関する事項」(同7号)を列挙している。

 このように、調査対象事項は、評価対象者の精神疾患、飲酒についての節度、信用状態など重大なプライバシーにかかわる事項にまで及び、更に調査対象は、対象者の配偶者(事実婚の配偶者も含む)、父母、子及び兄弟姉妹などの家族(配偶者の父母及びその子も含む)や同居人などにも及び、調査対象が無限に広がる可能性を有している。

 しかも適正評価を口実に思想・信条の調査をするなど、悪用される危険性もある。

 4.国民の「知る権利」を侵害し、民主主義の根幹を揺るがす

 次に、法案は「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」(21条1項)、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする(21条2項)こととした。

 しかし、21条1項の報道又は取材の自由に十分配慮するとの規定は、抽象的な訓示規定に過ぎず、これにより報道又は取材の自由が法的に担保される保障は何もない。

 また、本法案は、取材目的を「専ら公益を図る」場合に限定している点で問題であり、さらに「著しく不当」という抽象的かつ不明確な文言では正当業務に該当するか否かの予測が困難である。したがって、このような配慮規定では、本法案のもつ取材活動に対する重大な萎縮効果や自己規制ないし過剰反応の歯止めには全くならない。

 さらに、「出版又は報道の業務に従事」しない者である一般市民や市民運動家、市民ジャーナリスト等には同条項が適用されず、不合理な差別となっている。

 これらの規定等の追加によっても、国民の知る権利が侵害され、民主主義の根幹を揺るがせる事態の危険性はなお高いものと言わざるを得ない。

 さらには、国会議員も処罰対象とされていることからすれば、国会議員による行政機関への種々の調査活動や国会議員間での自由な討論及び有権者への国政報告活動をすべて、刑罰をもって禁止することも可能となり、国民主権に基づく議会制民主主義にも抵触する。

 5.秘密保護よりも情報管理システムを適正化すべきである

 これまで指摘したように、本法案は、基本的人権尊重主義、国民主権原理、議会制民主主義、罪刑法定主義をはじめ、憲法上の諸原理と正面から衝突する多くの問題を含んでいる。

 また、数多くの憲法・メディア法学者や刑事法研究者も本法案に反対する旨表明している。

 更に、政府が実施した本法案の原案に関するパブリックコメント募集においては、2週間という短期間に、9万通を超える意見が寄せられ、そのうち、約77%が制定に反対する趣旨であったというのであるから、このことは、政府及び国会において重く受け止める必要がある。

 重要な情報の漏えいの防止は、情報管理システムの適正化によって実現すべきであって、特定秘密保護法案の制定によって対処すべきではない。

 むしろ今必要なのは、情報を適切に管理しつつ、情報の公開度を高め、国会が行政機関を実効的に監視できるようにするために、公文書管理法、情報公開法、国会法、衆参両議院規則などの改正を行う事である。

 当会は、特定秘密保護法の制定に強く反対するものである。

 2013年11月27日
 三重県弁護士会 会長 向山富雄

 憲法改正発議要件の緩和に反対する会長声明
 ttp://mieben.info/archives/topics/427/

 近代憲法は、国家権力に縛りをかけ、国家権力の濫用を防止して国民の権利と自由を保障することを目的とする(立憲主義)。ここには、多年の歴史を通して国家権力による専制から自由と権利を獲得してきた人類の叡知が込められている。

 日本国憲法が採用する国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義は、将来の世代にわたって永続的に受け継いでいかなければならない基本原理である。

 そして、日本国憲法96条が憲法改正の発議に国会の各議院の総議員の3分の2以上の賛成を必要とする特別多数決を要求しているのは、この憲法の基本原理が時々の国家権力によって容易に変えられないようにするための制度的保障である。この憲法改正手続条項は、憲法の最高法規性の宣言(憲法第98条)、違憲立法審査権(憲法第81条)及び憲法尊重擁護義務(憲法第99条)とともに立憲主義を支える礎である。

 ところが、近時、憲法第96条の憲法改正発議要件を衆参両議院の総議員の過半数に緩和をすることを複数の政党が主張し、今回の参議院議員選挙で改憲勢力が大勝したことから改憲問題が現実味を帯びつつある。

 そもそも国家権力の濫用を防止して基本的人権の侵害を防ぐためには、憲法の基本原理が時々の国家権力によってみだりに変えられないという制度的保障が必要となる。現状では、法律制定の場面において激しい政治的対立の下、十分な審議を経ないまま、国会での強行採決が繰り返されてきた。憲法改正発議要件の緩和(単純過半数)は、国民の代表である国会での熟議による合意形成の機会を奪い、時々の国家権力による恣意的な憲法改正に道を開き、立憲主義の土台を揺るがすおそれがある。

 しかも、昨今の憲法第96条改正の動向は、まず改正要件を緩和して憲法改正のハードルを下げ、その後に憲法第9条をはじめ、国民主権主義、基本的人権の尊重、恒久平和主義という憲法の基本原理の改正にも適用されるものであって、このような基本原理についての発議要件の緩和は到底容認できない。
また、日本国憲法の憲法改正要件は、アメリカ、スペイン、韓国などの先進各国と比較して特に厳格ではない。個別の憲法改正が実現するか否かは、国会の熟議を経て合意形成を成し遂げることができるか、その憲法改正の内容が政治的・社会的要請に応えたものであるか、国民が真に求めているものであるかによるのである。戦後日本の国民は、日本国憲法が保障した自由と権利を享受し、この憲法を基礎として社会的、経済的な発展を実現させてきた。これまでに日本国憲法が一度も改正されなかったのは、国民の多数がそれを望んでいなかったからに他ならず、憲法改正手続を定めた憲法第96条に原因があるわけではない。

 更に、2007年5月18日に成立した日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」という。)には、国民投票における最低投票率の規定がなく、国会による発議から国民投票までに十分な議論を行う期間が確保されておらず、憲法改正に賛成する意見と反対する意見とが国民に平等に情報提供されないおそれがあるという問題点がある。憲法改正手続法の問題点にはまったく手が付けられないまま、現在、国会の発議要件の緩和の提案だけがなされているのは、本末転倒と言わざるを得ない。

 基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士で構成される三重弁護士会は、日本国憲法の立憲主義を尊重し、基本的人権の擁護に力を尽くしてきた。三重弁護士会は、憲法改正発議要件の緩和が立憲主義の根底を覆すおそれがあることを深く憂慮し、憲法96条にかかる改正案に強く反対する。

 2013年7月26日
 三重弁護士会 会長 向山富雄

 「共通番号法」法案成立に対する会長声明
 ttp://mieben.info/archives/topics/425/

 2013年(平成25年)5月24日、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律」案(いわゆる「共通番号法」案)が参議院本会議で可決され、成立した。

 本法案は、昨年の11月の衆議院解散により廃案となった同名の法案を一部修正したものである。

 本法案は、国民と外国人住民全員に付けた個人番号(マイナンバー)をマスターキーとして、あらゆる個人情報を名寄せできるようにするものである。政府は、マイナンバーの利用を、税と社会保障に限定せず、民間でも利用する予定であるから、プライバシー権が侵害される可能性が旧法案よりより高くなっている。

 また、マイナンバーが記載された個人番号カードが民間でも利用されるようになると、アメリカで被害が続出している成りすましによる不正利用の可能性が飛躍的に高まる。

  政府は、国民にマイナンバーを付ければ、行政事務が簡素化するというが、現時点でも、どの程度、行政事務が簡素化できるのか具体的に説明することができない。

 民主党政府では、マイナンバーを活用することにより、正確な所得の把握をして、「給付付き税額控除」制度を創設して、真に手を差しのべるべき低所得者に対して現金給付をするとの理由で導入を図ったが、自民党政府は、「給付付き税額控除」の制度よりも「軽減税率」の制度により低所得者対策を講じると述べており、マイナンバー導入の理由が不明確となっている。

 政府は、このシステム構築費用として2〜3000億円、毎年の運営費用が350億円程度かかると述べているが、費用対効果についての試算はされておらず、国家財政が逼迫する中、このようなシステム構築の必要性について具体的に説明できない。

 以上のとおり、本法案には、日本社会の今後のあり方や財政に重大な影響を与える問題、プライバシー権の侵害、成りすましによる不正利用の可能性等、多くのリスクがあるにもかかわらず、十分な審議に基づく抜本的な見直しを行うことなく、国会が拙速に本法案を成立させたことは極めて問題であり、強く抗議する。

 共通番号法は、2016(平成28年)年1月から施行が予定され、法施行後3年を目途に個人番号の利用範囲の拡大について検討を加えるとされているが、当会は、重大な問題を抱える本法の施行の停止ないしは廃止法の制定を求める。

 2013年6月28日
 三重弁護士会 会長 向山富雄

 生活保護基準の引下げに反対する会長声明
 ttp://mieben.info/archives/topics/423/

 昨年8月10日、社会保障制度改革推進法が成立した。そして、同法附則2条には「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化」を含む「必要な見直しを早急に行うこと」をの文言が明記された。これを踏まえて閣議決定された「平成25年度予算の概算要求組換え基準」では、「特に財政に大きな負荷となっている社会保障分野についても、これを聖域視することなく、生活保護の見直しをはじめとして、最大限の効率化を図る」「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組み、その結果を平成25年度予算に反映させるなど、極力圧縮に努める」との基本方針が示されている。

 第二次安倍内閣の田村憲久厚生労働大臣も、本年1月16日、生活保護の支給基準が低所得者の生活費の平均を上回るケースがあるとした社会保障審議会生活保護基準部会の検証報告書を受けて、総額全体についての引下げを明言した。

 さらに、同大臣は、本年1月27日、平成25年度政府予算案における財務大臣との折衝の結果、本年8月から3年間をかけて、生活保護のうち生活扶助を段階的に約6.5%削減する等の内容で合意した、との報道もなされている。

 しかしながら、生活保護基準は、憲法25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であって、我が国における生存権保障の水準を決する上で極めて重要な基準である。それだけでなく、生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げ目標額が下がり、労働者の労働条件にも大きな影響が及ぶ。また、生活保護基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準、就学援助の給付対象基準など、福祉・教育・税制など多様な施策の適用基準にも連動する。つまり、生活保護基準の引下げは、現に生活保護を利用している人だけでなく、国民全体に多大な影響を及ぼすのである。

 そもそも、低所得者世帯の消費支出と生活保護基準を比較検証し、これを生活保護基準引き下げの根拠とすることには全く合理性がない。平成22年4月9日付けで厚生労働省が公表した「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」によれば、生活保護の捕捉率(制度の利用資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)は15.3%〜29.6%と推測され、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている「漏給層(制度の利用資格のある者のうち現に利用していない者)」が大量に存在する現状においては、低所得世帯の支出が生活保護基準以下となるのは当然である。当会では、昨年11月28日に全国一斉生活保護ホットラインを実施したところ、合計41件にも上る相談が寄せられた。その中には、制度の利用資格があるのに市役所又は福祉事務所の対応によって制度を利用できていない方からの相談が数多くあった。

 低所得者世帯の消費支出と生活保護基準の比較を根拠に生活保護基準を引き下げることを許せば、生存権保障水準を際限なく引き下げていくことにつながり、合理性がないことが明らかである。

 なお、生活保護基準の引下げの背景には、生活保護の「不正受給」が増加しているとの見方があると思われる。「不正受給」自体は許されるものではないが、「不正受給」は金額ベースで0.4%弱で推移しており、近年目立って増加しているという事実はないのであって、生活保護基準の引下げにつながるものではない。また、最低賃金や国民年金が、就労や保険料納付を前提としない生活保護費よりも低いのは不当との見方もある。しかし、これは最低賃金や年金支給額の引き上げによって解決すべき問題であり、生存権保障の根幹をなす生活保護基準の引き下げによって解決すべき問題ではない。

 憲法25条に定める生存権保障の根幹をなす生活保護基準は、生活保護利用者を含む市民各層の意見を聴取した上で多角的かつ慎重に決せられるべきものである。財政の支出削減目的の「初めに引き下げありき」で政治的に決せられることなど、到底許されるべきことではない。

 貧困と格差が拡大する中、生活に困窮する人たちに対する施策が未だ不十分な現状においては、むしろ、最後のセーフティネットである生活保護制度は積極的な運用が望まれる。

 よって、当会は、来年度予算編成過程において生活保護基準を引き下げることに強く反対するものである。

 2013年1月30日
 三重弁護士会 会長 村瀬勝彦

 法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」事務当局試案の公表を受けて、改めて、冤罪を生み出さない新たな刑事司法の構築を求める会長声明
 ttp://mieben.info/archives/topics/434/

 平成23年6月、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」という。)は、郵便不正事件、足利事件、布川事件、氷見事件、志布志事件、東電OL事件を始めとする冤罪・証拠ねつ造事件など、捜査機関の信頼性を大きく揺るがす事案の発生を背景に、法務大臣から、「近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み、時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや、被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など、刑事の実体法及び手続法の整備の在り方についてについて、御意見を承りたい。」とする諮問第92号を受けて設置されたものである。

 ところが、平成26年4月30日に公表された事務当局試案(以下「試案」という。)は、冤罪・証拠ねつ造事件の根絶という特別部会の

 存在意義を忘れたもので、これまでの捜査・公判の在り方を見直すことなく、捜査当局に新たな捜査手法を与える仕組みを取り入れようとするものに他ならない。

 すなわち、試案が示す9つの制度の中でも、特に「取調べの録音・録画制度」、「証拠開示制度」、「身柄拘束に関する判断の在り方についての規定」については、冤罪・証拠ねつ造事件の根絶にはほど遠い不十分なものである一方、制定当時より違憲であるとの批判が強い通信傍受法の対象拡大、司法取引制度の導入など、むしろ、捜査機関側の権限強化に重点が置かれている。

 具体的には、「取調べの録音・録画制度」では、録音・録画を義務づける対象を全刑事事件の約2パーセントに過ぎない裁判員裁判事件の被疑者に対する取調べとする案と、これに全身柄拘束事件における被疑者に対する検察官取調べを加える案が提示されているが、いずれの案でも、志布志事件で問題とされた警察による取調べや郵政不正事件で問題とされた参考人の取調べは対象とはならない。また、例外事由については、「被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき」という抽象的な要件などに加え、今回、試案で新たに暴力団構成員による犯罪に係るものが付加されたため、さらに広範なものとなり、捜査機関の裁量を実質的に認める結果となってしまう。

 「証拠開示制度」についても、全面的証拠開示制度については記載すらなく、検察官が保管する証拠の一覧表を交付する制度が検討されるのみであり、警察が保管する証拠については全く言及されていない。

 冤罪の温床である人質司法の問題についても、「身柄拘束に関する判断の在り方についての規定」において、確認的な規定を設けるとしているだけで、実効的な改善案は出されていない。

 当会が存する三重県内に限定しても、名張毒ぶどう酒事件では自白の信用性や証拠開示の問題が再審請求の度に問題となっている。また、平成24年9月には、いわゆるPC遠隔操作事件による誤認逮捕が三重県警察のほか、神奈川県警察、大阪府警察及び福岡県警察で発生しており、警察による取調べの問題が指摘されたところである。

 さらには、平成26年3月27日には、静岡地方裁判所が、袴田巌氏に対し、再審開始、刑の執行停止及び拘置を取り消す旨の決定をした。この決定の中で、捜査機関によって自白を得るためになされた長期間の取調べの最中に、重大な証拠がねつ造された疑いがあるなどと指摘され、取調べ全過程の可視化や全面的証拠開示の重要性が改めて認識されたところである。

 このような状況の下、今回公表された試案は、全事件の取調べ全過程の可視化や全面的証拠開示まで踏み込まず、身柄拘束に関する判断の在り方についても具体的な案を示さず、通信傍受法の対象拡大、司法取引制度の導入などを推進するものであって、捜査機関側の権力肥大に重点が置かれる制度改革案であり、諮問第92号の趣旨を損ね、もはや、特別部会の自己否定にも等しいというべき内容である。

 そこで、当会は、特別部会に対し、今後、意見の最終とりまとめにあたっては、冤罪を生み出さない新たな刑事司法の構築という目的意識に立ち返り、全事件全過程を可視化する制度と、捜査機関の手持ち証拠を全面的に開示する制度と、安易な身柄拘束を根絶する制度を速やかに構築する一方、通信傍受法の対象拡大や司法取引など、捜査権力に強大な権限を与える制度を安易に導入することのないよう、強く求めるものである。

 2014年5月14日
 三重県弁護士会 会長 板垣謙太郎

投稿日: 2018年2月1日

【余命三年時事日記】2342 どんたく滋賀弁護士会@ 2018年1月31日

【余命三年時事日記】2342 どんたく滋賀弁護士会@ 2018年1月31日

ソース:2342 どんたく滋賀弁護士会@ 2018年1月31日
    http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/31/2342-%e3%81%a9%e3%82%93%e3%81%9f%e3%81%8f%e6%bb%8b%e8%b3%80%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a0/

2342 どんたく滋賀弁護士会@
 
 消費者被害と民法の成年年齢の引下げに関する会長声明
 ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160711.html

 選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる「公職選挙法等の一部を改正する法律」が本年6月19日から施行され、政府において、民法の成年年齢を20歳から18歳へ引き下げることが議論されている。

 しかし、公職選挙法の選挙権年齢と民法の成年年齢とは同列に論じられるものではなく、民法の成年年齢の引下げは、若年者に対する消費者被害を拡大させるおそれが高いので、当会は、現時点において、民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。

 民法の成年年齢を引き下げた場合における最も大きな問題は、18歳、19歳の若年者が未成年者取消権(民法5条2項)を喪失することである。

 民法において、これら若年者を含む未成年者は、単独で行った法律行為を未成年者であることのみを理由として取り消すことができる。このため、未成年者が違法もしくは不当な契約を締結させられた場合、未成年者取消権によってその者を救済できることを多くの弁護士が日常業務において経験しているところである。また、消費生活センター等に寄せられる相談において未成年者取消権を失う20歳になると相談件数が急増していることは、未成年者取消権が未成年者に違法もしくは不当な契約の締結を勧誘する悪質な事業者に対する抑止力として機能していることを示している。

 国民生活センター発行の消費生活年報によれば、20歳未満の未成年者に対する携帯電話端末等を経由した消費者被害が多数報告されており、成年年齢の引下げによって18歳、19歳の若年者の未成年者取消権が失われると、被害に遭った同若年者の救済が困難になるほか、悪質な事業者に対する抑止力の範囲が狭まることによって、同若年者に対する消費者被害がさらに拡大するおそれが高い。特に、人口に占める大学生の比率が日本で3番目に高い滋賀県においては、民法の成年年齢の引下げによって、県下の消費者被害が増加する危険性がある。

 また、18歳、19歳の若年者に対する消費者被害を防ぐためには、同若年者に対する消費者教育を行き届かせる必要があるところ、「消費者教育の推進に関する法律」が施行されてから数年しか経過しておらず、また、同若年者に対する消費者教育の効果が客観的データをもとに検証されていない現時点においては、同若年者に対する消費者教育が行き届いていると評価することもできない。

 さらに、民法の成年年齢の引下げは、他の多くの関連法の改正に影響するため、若年者とその者を取り巻く多くの関係者(親、教育関係者、行政関係者等)の意見を聴いて、その是非が判断されるべきであるところ、現時点において、これら関係者の間で十分な議論がなされているとは言えず、また全国紙新聞社による全国世論調査(2015年10月3日付読売新聞)においても成年年齢の引下げについて「反対」が53%を占めるなど、同引下げについて国民的合意が成立しているとも言えない。

 選挙権年齢の引下げは18歳、19歳の若年者に権利を付与するものであるのに対し、民法の成年年齢の引下げは同若年者に私法上の行為能力を付与する反面、未成年者取消権を喪失させるものであって、同列に論じられるものではない(実際、成年被後見人は行為能力が制限されるが、選挙権は認められている)。昨日の参議院議員選挙の投票に見られるように18歳、19歳の若年者に早期の社会参加を促す等の要請があるとしても、同若年者を含む未成年者を取り巻く消費者被害の現状に鑑みれば、民法の成年年齢の引下げは、未成年者取消権の行使範囲を縮小させ、同若年者に対する消費者被害を拡大するおそれが高いものである。

 以上のとおり、民法の成年年齢の引下げは、18歳、19歳の若年者に対する消費者被害を拡大するおそれが高いので、当会は、現時点において、民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。

 2016(平成28)年7月11日
 滋賀弁護士会 会長 野嶋直

 いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
 ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20161122.html

 1.政府は、過去3度廃案となった共謀罪創設規定を含む法案(以下「旧法案」という。)について、いわゆる「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めたうえで、これを新設する組織犯罪処罰法改正案(以下「新法案」という。)を国会に提出することを検討していると報じられている。

 当会は、共謀罪が外形的行為のない意思を処罰しないとする刑法の基本原則に反するほか、共謀罪の新設により思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由等の憲法上の基本的人権が重大な脅威にさらされることから、過去、共謀罪の新設に反対する会長声明を出している。

 2.報道によると、新法案は、処罰対象を旧法案の「共謀」にかえて「(犯罪の)遂行を2人以上で計画した者」へ変更している。しかし、そもそも「計画」という刑法上の概念が不明確であるうえ、「計画」と「共謀」は「犯罪の合意」と同義であって、両者は実質的に何ら変わることはない。

 また、新法案は、「犯罪の実行の準備行為」を新たな要件として付加している。しかし、「準備行為」は、いわゆる予備罪・準備罪における予備・準備行為と異なり、当該行為自体の危険性を要さないため、例えばATMにおける預金の引出し行為など日常的な生活活動も広く「準備行為」とされかねず、恣意的な解釈により処罰される行為の範囲が拡大されうるなど、処罰範囲の不明確性という旧法案の危険性は変わっていない。

 さらに、新法案は、適用対象を単に「団体」ではなく、「目的が長期4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体(組織的犯罪集団)」としている。しかし、その認定は捜査機関の判断と運用に委ねられることもあり、本来は犯罪の実行を目的としていない団体の一部の構成員が一定の犯罪の共謀を行ったことをもって当該団体が組織的犯罪集団と認定されうるなど、適用対象が拡大する危険性が高く、適用対象の不明確性という旧法案の危険性も解消されていない。

 なお、新法案において「組織的犯罪集団」の目的とされる犯罪は、テロとは全く関係ない犯罪を含め、旧法案と同様に600以上にもわたる。今般の刑事訴訟法改正に盛り込まれた通信傍受制度の拡大に新法案が加わったときには、テロ対策の名の下に市民の会話が監視・盗聴され、市民の表現活動等が大幅に萎縮するなど、市民社会のあり方が大きく変わるおそれさえある。

 3.以上のとおり、テロ等組織犯罪準備罪は、旧法案における共謀罪と同様の危険がある。よって、当会は、政府がテロ等組織犯罪準備罪を新設する新法案を国会へ提出することに反対する。

 2016(平成28)年11月22日
 滋賀弁護士会 会長 野嶋直

 朝鮮学校に対する適切な補助金の交付を求める会長声明
 ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20161124.html

 1.文部科学大臣は、本年3月29日、朝鮮学校を認可している28都道府県の知事に対し、「朝鮮学校にかかる補助金交付に関する留意点について(通知)」を発出した。同通知は、朝鮮学校に関し、「北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしている」という政府の認識を示したうえで、前記の各知事に対し、朝鮮学校への補助金交付について、「補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する十分な御検討と補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保」を求めている。

 同通知は、具体的な事実関係を指摘することなく前記のような政府の認識だけを根拠に、数多くある各種外国人学校のなかの朝鮮学校のみを対象として、事実上、補助金の交付を停止するよう求めたものといえる。現に、いくつかの地方自治体においては、同通知を踏まえ、補助金の交付を停止する動きがあると報道されており、このような流れが今後も続くことが強く懸念される。

 2.朝鮮学校に通学する子どもたちも、他の学校に通う子どもたちと同様、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利である学習権(憲法26条1項、同13条)が保障されている。にもかかわらず、子どもたちとは何らの関係がない外交問題・政治問題により朝鮮学校への補助金の交付が停止することは、朝鮮学校に通学する子どもたちの学習権を侵害するものである。

 また、朝鮮学校に通う子どもたちが、合理的な理由なく他の学校に通う子どもたちと異なる不利益な取扱いを受けることは、平等原則(憲法14条1項、国際人権(自由権)規約26条、国際人権(社会権)規約2条2項)にも反する。
さらに、前記通知による補助金の交付の停止等は、朝鮮学校に通う子どもたちに社会からの疎外感を与えるとともに、その子どもたちへの不当な差別を助長する可能性があり、この点からも容認することができない。

 3.よって、当会は、文部科学大臣に対し、上記通知を撤回するよう求めるとともに、滋賀県及び大津市に対し、朝鮮学校に対する補助金について憲法及び人権規約等の趣旨に照らして適切に交付されるよう求める。

 2016(平成28)年11月24日
 滋賀弁護士会 会長 野嶋直

 いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する会長声明
 ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20170623.html

 2017(平成29)年6月15日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続きにより、本会議の採決が行われ、成立した。

 当会は、本法案の適用範囲や処罰範囲が不明確で恣意的な解釈により処罰される行為の範囲が拡大する恐れがある、また、市民生活が監視され正当な表現活動まで大幅に萎縮する恐れがあるなどとして、一貫してこれに反対してきた。

 政府による本法案の説明が不十分である、あるいは本国会での成立を見合わせるべきとの複数の世論調査の結果が出ているなかで、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記の通りの異例な手続きを経て、本法案が成立に至ったことは極めて遺憾である。

 当会は、日本弁護士連合会、各弁護士会連合会、全国の各弁護士会とともに、本法律が恣意的に運用されることがないように注視するとともに、今後、成立した本法律の廃止に向けた取り組みを行う所存である。

 2017(平成29)年6月23日
 滋賀弁護士会 会長 佐口裕之

 死刑執行に対する会長声明
 ttp://shigaben.or.jp/chairman_statement/20170810.html

 本年7月13日、大阪拘置所において1名、広島拘置所において1名、計2名の死刑が執行された。第2次安倍内閣において11回目(計19名)、金田勝年前法務大臣に就任中においては昨年11月以来2回目の執行であった。

 今回執行されたうち、1名については再審請求を行っている中での死刑執行であり、他1名については第一審において死刑判決が下され、弁護人が控訴したが自ら控訴を取り下げ死刑判決が確定したうえでの死刑執行である。

 刑事司法が、誤判のおそれと隣り合わせにあること、誤判の中には全くのえん罪のみならず、量刑を左右する重要な事実についての事実誤認も含まれること、死刑の犯罪抑止効果に疑問があること、国連から再三にわたって死刑廃止の勧告を受けていることなどを考え、当会は、昨年9月27日に開催された臨時総会において、死刑制度は廃止されるべきであるとの立場を明らかにしたところである。日本弁護士連合会も、死刑制度の重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、昨年10月7日に開催された人権擁護大会において、死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言を採択したところである。

 上記決議や宣言等に反してなされた死刑執行は、当会として到底容認することができない。
また、我が国の刑事訴訟制度は、死刑が問題となる事件についても、裁判官(裁判員)の全員一致性、自動上訴制度、再審請求に対する国選弁護制度といった、特別な手続きが用意されておらず、生命剥奪という究極の刑罰に対する手続保障が不十分である。その点でも、今回の死刑を執行した法務大臣の判断は批判を免れない。

 当会は、日本弁護士連合会とともに、政府に対し、国民の議論を深めるため、執行対象者の選定基準、手続き、執行方法など死刑に関する詳細な情報を公開すること、仮釈放の要件を加重した重無期刑の導入など、死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体を改革すること、上記のとおり死刑が問題となる事件における手続保障を充実させること、これらが実現するまでの間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)を制定するなどして死刑の執行を停止することを改めて要望するものである。

 2017(平成29)年8月10日
 滋賀弁護士会 会長 佐口裕之

 死刑の執行に抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明
 ttp://www.shigagen.or.jp/chairman_statement/20180119.html
 
 2017(平成29)年12月19日、2名に対して死刑が執行された。第2次安倍内閣発足以降、死刑の執行は12回目、21名が執行されたことになる。今回の2名は、いずれも弁護人が付いて再審を請求している中での執行であった。

 当会は、2016(平成28年)年9月の臨時総会において「死刑廃止を求める決議」を採択した。また、日本弁護士連合会も、同年10月の人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択している。

 死刑を行うということは、この世に生きる値打ちのない生命があるということを国家が正面から宣言することにほかならない。私たちが目指すべきは、罪を犯した人の更生の道を完全に閉ざすことなく、すべての人が尊厳を持って共生できる社会である。

 刑事司法は常に誤判の危険と隣り合わせにある。犯人性を誤って認定するという全くのえん罪事件のみならず、量刑に影響を及ぼす事情についての誤認によって、死刑か無期懲役かの判断を誤るおそれもある。いかなる裁判制度においても、このような誤判のリスクを完全になくすことはできない。まして、現在の日本の刑事裁判制度においては、死刑が問題となる件についても、裁判官(裁判員)の全員一致性、自動上訴制度、再審請求に対する国選弁護制度といった、特別な手続きも用意されていない。誤判によって死刑に処せられる危険性を払拭できない以上、そのことだけでも死刑制度を維持することは正当化できない。

 死刑制度に関しては、被害者遺族の感情を根拠にその必要性が語られることが少なくない。もとより、犯罪により身内を無くされた被害者遺族の方が厳罰を望むことはごく自然なことであり、その心情は十分に理解できる。しかし、刑罰制度の根拠は、犯罪被害者や遺族の報復感情に尽きるものではなく、刑種の選択と量刑の決定にあたり、犯罪被害者や遺族の感情を考慮するのは当然としても、それのみを決定的な要素とすることはできない。死刑制度の廃止は、刑罰制度全体を見直し、犯罪被害者や遺族に対する支援と並行して進めていくべきものであり、犯罪被害者や遺族の支援と矛盾するものではない。
 今回執行されたうちの1名は犯行当時少年であった。少年による犯罪は、成育環境の影響が非常に強いものであり、少年に全責任を負わせて死刑にすることには大きな問題がある。

 このほか、死刑に犯罪抑止効果があるか疑問であること、死刑廃止が世界的な潮流であり、日本もこれまでに再三にわたって国連から死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を受け続けていることなど、死刑制度を維持すべきでない状況がある。

 当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、直ちに死刑執行を停止した上で、死刑に関する詳細な情報を公開し、死刑制度の廃止について全社会的議論を深め、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに、死刑制度を廃止することを求めるものである。

 2018(平成30)年1月19日
 滋賀弁護士会 会長 佐口裕之

投稿日: 2018年1月31日

【余命三年時事日記】2341 ら特集奈良弁護士会C 2018年1月31日

【余命三年時事日記】2341 ら特集奈良弁護士会C 2018年1月31日

ソース:2341 ら特集奈良弁護士会C 2018年1月31日
    http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/31/2341-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%86%e5%a5%88%e8%89%af%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a3/

2341 ら特集奈良弁護士会C
 
 奈良弁護士会
 ttp://www.naben.or.jp/

 「少年法等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
 2005/07/11
 奈良弁護士会  福井 英之

 はじめに

 本年3月1日に内閣において閣議決定された「少年法等の一部を改正する法律案」(以下、「今回の改正案」と指称する)が国会に上程されている。

 今回の改正案は、概要、(1)触法少年及びぐ犯少年にかかる事件について警察官の調査権限を認めること、(2)14歳未満の少年に対しても少年院送致処分を可能とすること、(3)保護観察中の少年に対し遵守事項違反を理由とする施設収容処分を可能とすること、(4)一定の対象事件の審判において弁護士による国選付添人制度を設けることを内容とするものであるが、以下に述べるとおり、これらの内容にはそれぞれ重大な問題点があるため、当会は、今回の改正案における上記(1)ないし(3)の内容には強く反対するとともに、上記(4)に関しても、少年の権利保障をより厚くする方向での再検討・修正を求めるものである。触法少年及びぐ犯少年にかかる事件について警察官の調査権限を認めることについて今回の改正案は、触法事件について警察官が調査を行ったうえ児童相談所に送致しうること、児童相談所はこのうち一定の重大事件については原則として家庭裁判所に事件送致しなければならないとすること及びぐ犯事件についても警察官の調査権限を認めることを含む。

 内閣は、今回の改正案の提出理由について、「少年非行の現状にかんがみ、これに適切に対処するため」とするのみであるが、その背景には、近時、14歳未満の少年による重大事件が社会的注目を集めたことがあると思われる。

 しかし、統計上は、14歳未満の少年による重大・凶悪事件が近時特に増加したという事実はなく、仮に社会内においてこのような印象があるとしても、これはマスコミによる事件報道のあり方等が影響しているところが大きい。

 触法事件及びぐ犯事件はいずれも犯罪ではなく、したがって、警察官が「捜査」することはできないというのが現行法の建前である。今回の改正案は、これを実質的に修正するものであり、特に触法事件については刑事訴訟法上の強制捜査をも可能とする点で看過できない問題点を含んでいる。しかるに、このような改正をあえてなすことが必要不可欠であるような立法事実は必ずしも存在しない。

 また、触法少年の多くは被虐待体験を含む複雑な成育歴を持ち、そのことが非行に至った背景事情となっているところ、このような問題点を発見し、これに対する適切なケアを選択することができるのは、警察官ではなく、子どもに対する福祉・教育の専門機関である児童相談所である。むしろ、警察官が自白の強要等不適切な調査を行った場合には、事件の真相解明が阻害されるおそれさえある(14歳未満の少年ではないものの、当会会員が付添人を務めた少年事件においてこのようなえん罪事件が報告されている)。

 さらに、ぐ犯事件についていえば、もともとその限界は曖昧であるうえ、今回の改正案は調査対象を「ぐ犯少年である疑いのある者」としているから、事実上極めて広い範囲の少年が警察官の調査・監視下に置かれることになる。

 このように、触法事件及びぐ犯事件において警察官の調査権限を認めることは重大な問題点を含むから、賛成できない。仮に現在の福祉的対応に不十分な点があるとしても、児童相談所及び児童福祉施設等の人的・物的充実を図るなどその改善・充実の方向で問題が考えられるべきである。

 14歳未満の少年に対しても少年院送致処分を可能とすることについて

 触法少年の多くが被虐待体験を含む複雑な成育歴を持ち、そのことが非行に至った背景事情となっていると考えられることは先に述べたとおりである。このような傾向は、重大な事件を犯した少年ほど強い。

 このように複雑な成育歴を持つ少年について

 再非行を防止するためには、一般社会とは異なる規律を課すことにより少年の規範意識を育てようとする少年院での処遇よりも、むしろ、福祉施設において一般社会にできる限り近いかたちでの育てなおしをし、少年自身が個人として尊重され愛されるという経験を経て、犯した罪の重さに向き合わせることが適切である。未だ14歳未満の未熟な少年を真の意味で更生させるには、このように個々の少年が抱える問題性に対応した福祉的処遇が必要であり、少年院に送致するのみでは必ずしも効果的な処遇とはならない。ここにおいても、むしろ、児童福祉施設における処遇の一層の充実等福祉的対応の強化が図られるのが先決である。

 保護観察中の少年に対し遵守事項違反を理由とする施設収容処分を可能とすることについて

 今回の改正案は、保護観察中の少年の遵守事項違反を理由とする少年院送致等の施設収容処分の創設を含む。

 しかし、遵守事項違反がぐ犯に該当すると考えられる場合は現行法のぐ犯通告制度(犯罪者更生予防法42条)により保護処分を行うことが可能であるから、このような制度をあえて設ける必要性は全くないばかりか、少年と保護司との間の信頼関係を基礎としつつ少年の自律的更生を目指す保護観察に対して、施設収容の威嚇を背景とした緊張関係を持ち込むものであって、有害でさえある。また、そもそも、遵守事項違反のみを理由として施設収容という重大な処分をなすということは、既に保護観察処分とした以前の非行を実質的に再度考慮しているといわざるを得ず、少年を「二重の危険」にさらすおそれがある。

 先の2点も同様であるが、今、拙速に従来の福祉的対応を、少年に対する監視及び厳罰の方向に転換するのは正しい方向性ではない。保護司の少年に対する温かい見守り・信頼に基づき運用されてきたわが国の保護観察制度はこれまで概ねよい成果を誇ってきたといえるのであり、その基本的方向を維持しつつ、保護司の増員等のさらなる制度改善こそが今必要とされるものである。

 一定の対象事件の審判において弁護士による国選付添人制度を設けることについて少年審判において、付添人の存在は、少年の法的権利の実質的保障の観点からも更生の実現の観点からも極めて重要であるが、これまでは、極めて限定された場合においてのみ国選付添人の必要的関与が定められているにすぎなかった。

 したがって、今回の改正案が国選付添人制度の対象を広げ、必ずしも非行事実の存否に大きな争いがないような事案についてもその対象に含めたこと自体については、積極的に評価することができる。しかし、少年鑑別所に収容された少年の全員に国費による付添人選任権を保障すべきであるとの観点からすれば、今回の改正案の内容は未だ不十分であり、かかる国選付添人制度のいっそうの拡充が必要である(なお、日本も批准している「子どもの権利条約」においては、その40条で、「刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は」「事案が権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関により法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い及び、特に当該児童の年齢又は境遇を考慮して児童の最善の利益にならないと認められる場合を除くほか、当該児童の父母又は法定保護者の立会いの下に遅滞なく決定されること。」が保障されるべき旨定められている)。

 また、少年が終局決定前に釈放されたときには国選付添人選任の効力は失われるとする点は、先に述べたような少年の権利保障及び更生の実現の観点からは不十分といわざるを得ず、この点も改善されるべきである。

 まとめ

 以上のような理由から、当会は、今回の改正案に対して、上記のような意見を述べるものである。

 「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明
 2004/07/21
 奈良弁護士会  会長 川崎 祥記

 裁判員制度は、国民の司法参加の理念の下に民主的裁判の実現を目指して導入されるものである。そのため同制度は、国民的基盤に立脚し裁判員が主体的に参加できるものとする必要がある。よって、当会は、2004年通常国会において同制度にかかる法案が上程され審議されるにあたり、以下の点につき強く要望する。

 1.(合議体の構成)

 裁判官の人数は1人または2人、裁判員の人数は9人ないし11人とし、国民が主体的、実質的に関与できる制度にすべきである。

 2.(評決)

 裁判官の人数は1人または2人、裁判員の人数は9人ないし11人とし、国民が主体的、実質的に関与できる制度にすべきである。

 3.(取調べの可視化)

 裁判官の人数は1人または2人、裁判員の人数は9人ないし11人とし、国民が主体的、実質的に関与できる制度にすべきである。

 4.(全面的証拠開示)

 検察官が所持する証拠については、検察官の公益性に照らし、できるだけ早期に全面的に開示する制度とすべきである。

 5.(裁判員の言論)

 健全な批判がないところに健全な発展はない。裁判員が任務を終えた後には、職務上知り得た秘密及び自己以外の発言者の発言内容であると特定できる事項を除いては、その経験を自由に述べることを容認すべきである。これを制限したり、守秘義務違反に刑罰を科したりすべきではない。

 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」案に対する意見書
 2002/11/20
 奈良弁護士会 会長 本多 久美子

 奈良弁護士会は、本年11月20日の常議員会における議決に基づき、標記法案(いわゆる『心神喪失者等「医療」観察法案』、以下「政府案」という)に対し、以下のとおり反対意見を表明する。

 1.政府案の概要

 政府案は、放火、強制わいせつ、強姦、殺人、自殺関与・同意殺人、傷害、強盗にあたる行為(以下「対象行為」という)を行い、心神喪失または心神耗弱を理由として、不起訴処分にされた者、あるいは無罪または刑を減軽する旨の確定裁判を受けた者について、継続的な医療を行わなくても対象行為の再犯を行うおそれが明らかにないと認められる場合を除き、検察官は、原則として地方裁判所に審判を求めなければならず、そこに設置される裁判官と精神科医である精神保健審判員からなる合議体が、「医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」には、決定により入院もしくは入院によらない医療(いわゆる通院)により指定医療機関において治療を受けさせる、というものである(政府案2条、6条、9条、11条、33条、41条、42条、43条等)。 上記入院は、入院期間の更新により無期限に及ぶ可能性があり、上記通院は3年ないし5年にわたり得る、という処遇制度である(同43条、44条、49条、51条等)。

 2.政府案の主な問題点

 (1) 疑似医療の強制隔離策

 政府案にいう「審判」は、「継続的な医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがある」か否かを判定するというのであり(同37条1項、42条1項1号等)、これは医療よりも治安のための隔離を優先させた「再犯のおそれ」を指すものでしかなく、精神障害者の治療や社会復帰に力点を置く判断ではない。 また、現在の精神医学では、将来における再犯の危険性の正確な予測は不可能であるともいわれるのに、「指定医療機関」での「医療」(同42条1項1号、43条1項等)は、精神障害者に無期限に及ぶ可能性のある不定期刑類似の身柄拘束処分を課するものといえ、重大な人権侵害を招くおそれがある。

 (2) 適正手続条項の潜脱

 政府案は、本人に対し、刑罰による場合に実質的に匹敵するような自由の制限をもたらし、重大な人権制限を招くおそれのある手続を設けるものであるにもかかわらず、上記審判において、弁護士である付添人や本人に証拠取調請求権が認められていないなど(同24条、25条2項)、憲法31条以下の規定による適正手続の保障、人身の自由の保障が確保されていない。

 (3) 地域医療・福祉の保安化・刑罰化

 政府案は、「入院によらない医療」(同42条1項2号)、いわゆる通院の処遇のための中心的な機関を保護観察所としている(同54条、59条等)。しかし、保護観察所は、刑の執行猶予者や仮釈放者に対する保護観察の実施を主たる任務とし、犯罪の予防を目的として活動する機関であり(執行猶予者保護観察法3条、犯罪者予防更正法18条、33条等)、犯罪の予防を目的として活動する刑事政策を担う機関であって、精神医療の専門機関ではない。保護観察所の現状から見て、「対象行為」とされる重大な犯罪にあたる行為を行った精神障害者の処遇ができる専門性と力量を認め難い。このような機関を通院処遇の中心的な機関に位置づけようとする政府案は、観察下の通院措置なるものが結局は刑罰類似のものであることを認めるものである。また地域医療・福祉の主要機関が保護観察所の管理・介入を受けることにより、精神障害者の地域医療・福祉全体が犯罪防止と保安のための機関に組み入れられていく危険をはらんでいる。

 (4) 隔離施設としての専門治療施設

 そもそも、精神障害者の医療においては、犯罪にあたる行為を起こした者への特別な「医療」などは存在せず、一般の精神医療と変わらず、医療内容も一般の精神障害者と重大な犯罪にあたる行為を行った精神障害者を区別する理由はないとされている。然るに、重い罪にあたる行為を行った精神障害者だけを、「対象行為」を行った「対象者」(政府案2条2項、3項)として、新たに設置される専門の治療施設たる「指定医療機関」(同2条)において「医療」を受けさせることは、「指定医療機関」が事実上刑務所類似の保安専門施設と解され易く、そこに入、通院する者を差別し特別のレッテルを貼る結果となりかねない。

 3.精神医療の充実こそ本筋である

 わが国において、精神障害者は、今なお根深い偏見と無理解のため深刻な差別と人権侵害を受け続けている。このような現状に対し、日弁連は、この奈良の地で昨年11月に開催された日弁連第44回人権擁護大会において、「障害のある人に対する差別を禁止する法律」の制定を提言した。上記政府案は、障害のある人に対する差別と人権侵害を増大させるおそれが強く、上記提言の趣旨に反すると言わねばならない。

 精神障害者により時として起こる不幸な事件を防止するためには、退院患者やいまだ精神医療の援助を受けていない精神障害者に対する偏見や差別をなくし、人権に配慮した精神医療の充実という観点から問題の解決を図るのが本筋である。

 日弁連は、かねてから、精神障害者に対しては、精神医療を充実してこそ、時として起こる不幸な事件を防止できるという主張を一貫した基本方針とし、当弁護士会もこれに賛同するものであり、上記治安重視の政府案を是認することはできない。

 また、政府・与党は政府案を一部修正する意向を示しているが、上記の問題点は一部の修正によって解決しうるものではない。以上のとおりであるから、当弁護士会は、精神障害者に対する重大な人権侵害のおそれがある政府案を廃案とすることを強く求めるものである。

 住民基本台帳ネットワークシステムの稼働の延期等を求める決議
 2002/07/17
 奈良弁護士会

 1999年8月に住民基本台帳法が改正され、本年8月より住民基本台帳ネットワークシステム(以下、「住基ネット」という)が稼働されることとなっている。住基ネットとは、住民基本台帳上、各国民に住民票コード(11桁の番号)を付け、住民票コードと本人確認情報(氏名、性別、生年月日、住所)を各都道府県、市区町村を結んだコンピュータネットワーク上で流通させ、全国何処ででも本人確認を可能とさせるシステムである。

 しかし、行政機関が、何らの制約もなく国民に関するデータを蓄積すれば、行政機関間のデータの共有、データの目的外流用等により、当該個人のあずかり知らないところで行政機関が個人データを集積し、国民一人一人を管理監視する事態が生じる高度の危険性がある。現に、住民票コードと同様の共通番号制を導入したスウェーデンの個人情報濫用監視機関であるデータ検査院の院長が1996年に来日した際、「このシステムを日本に導入することは勧めない。多くの国民がこのシステムを導入したことを後悔している。個人認識番号システムは、気付かないうちに我々を腐敗させプライバシーに対する脅威のシンボルとなった。」と証言している。

 また、ネットワーク上の情報には、必ず不正流出の危険がつきまとう。ところが、日弁連の調査によれば、過半数の自治体が住基ネットの管理等を担当する専任職員を置いておらず、担当職員も必ずしもコンピュータに精通している訳ではなく、住基ネットのマニュアルを完全に理解していると答えた自治体は3%しかない。このような状態では、住基ネットのセキュリティ保護に多大な不安を抱かざるをえない。

 1999年の住民基本台帳法改正時には、かかる危険に鑑み「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに所要の措置を講ずるものとする。」との附則が定められた。当時の小渕首相によれば、この措置とは個人情報保護法制の制定を指す。すなわち、個人情報保護法制の制定が、住基ネット稼働の前提となっているのである。

 ところが、現国会において、政府与党は行政機関の保有する個人情報保護法案の成立を既に断念している。そうであるにもかかわらず、政府は、本年8月5日より住基ネットを稼働させる予定を変えていない。個人情報保護法制を整備せずに住基ネットを稼働させることは、稼働の前提を欠き、上記の危険を顕在化させる暴挙であって、絶対に許してはならないことである。

 よって、奈良弁護士会は、個人情報保護に万全を期した法制度、人的物的制度が整備されるまで住基ネットの稼働を延期すべきと考える。また住基ネット自体について、その廃止をも含めた再検討を求める。

 有事法制3法案に反対する常議員会決議
 2002/06/12
 奈良弁護士会 常議員会

 現在国会で審議中の「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」及び「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、併せて「有事法制3法案」という。)については、以下のような重大な問題点が存する。

 1.「武力攻撃事態」という概念は広範であいまいに過ぎる。

 「武力攻撃のおそれのある事態」や「事態が緊迫し武力攻撃が予想されるに至った事態」までが「武力攻撃事態」とされているが、法案に盛り込まれた強力な権限が政府に与えられる要件として、また大幅な基本的人権制限の要件としてこれらの概念は極めて広範かつあいまいである。これでは、政府の恣意的な判断を防ぐことは著しく困難と言わざるを得ない。

 2.憲法の中核をなす基本的人権保障原理を変質させる危険性を有する。

 いったん内閣により「武力攻撃事態」の認定が行われると、陣地構築、軍事物資の確保等のための私有財産の収用・使用、軍隊・軍事物資の輸送、戦傷者治療等のための市民に対する役務の強制、交通・通信・経済等の市民生活・経済活動の規制措置を公用令書の交付のみによりとることができるとされている。しかも取扱物資の保管命令違反に対しては6ヶ月以下の懲役、立入検査拒否、妨害等に対しては20万円以下の罰金が科されるなど、刑罰による強制も規定されている。このような措置は、適正手続によることなく市民の基本的人権を大きく制限するものである。

 3.憲法の定める平和原則等に抵触するおそれが強い。

 憲法は、国際紛争解決の手段としての武力の行使とその威嚇を禁じ、国権の発動としての戦争を放棄し、戦力の不保持を謳っており、武力攻撃の「おそれ」のある事態や武力攻撃が「予測」される事態というあいまいな概念で自衛隊の出動やその待機をすることとするのは、憲法の前文及び9条に抵触するおそれが強い。「武力攻撃事態」が周辺事態法に定められた米軍の軍事活動に対する自衛隊の後方地域支援活動に際して発生した場合、自衛隊の米軍との共同行動は、政府見解でも違憲とされている「集団的自衛権」の行使にさらに大きく踏み込むこととなるおそれが強い。

 4.憲法が定める民主的な統治構造を大きく変容させ、民主政治の基盤を侵食する危険性を有する。

 武力の行使、情報・経済の統制等を含む幅広い事態対処権限を内閣総理大臣に集中し、その事務を閣内の「対策本部」に所掌させることは、行政権は合議体である内閣に属するとの憲法規定と抵触し、また内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示権及び地方公共団体が行なう措置を直接実施する権限は地方自治の本旨に反する。

 5.国民主権と民主主義の基盤を崩壊させるおそれがある。

 日本放送協会(NHK)などの放送機関を指定公共機関とし、これらに対し、「必要な措置を実施する責務」を負わせ、内閣総理大臣が、対処措置を実施すべきことを指示し、実施されない時は自ら直接対処措置を実施することができるとすることにより、政府が放送メディアを統制下に置き、市民の知る権利、メディアの権力監視機能、報道の自由を侵害し、民主主義の基盤が崩壊するおそれがある。

 このように有事法制3法案には、憲法に抵触する重大な疑義が存し、同法案が憲法の基本に関わる重大な問題点を有するにも関わらず、国民の論議が十分に尽くされたとは言い難い。

 よって、当会は、有事法制3法案の重大性・危険性を国民に訴えるとともに、有事法制3法案に反対し、同法案を廃案にするよう求める。

 ネパール人勾留決定問題に関する会長声明
 2000/07/11
 奈良弁護士会 会長 相良 博美

 被告人ゴビンダ・プラサド・マイナリに対する強盗殺人被告事件において、被告人は一審東京地方裁判所で無罪判決を受けていたが、東京高等検察庁はこれに対し控訴の申立をするとともに職権による勾留状の発布を要請し、東京高等裁判所は、平成12年5月8日、被告人に対する勾留を決定した。これに対し、弁護人は特別抗告をしたが、最高裁判所は6月28日までに特別抗告を棄却する決定をした。

 一審判決は、2年余りにわたって合計34回の公判を行い、慎重かつ十分な証拠調べの下に無罪の判決を下したものである。しかしながら、東京高等裁判所は、一審の判決内容について、何らの実質審理をも行うことなく、すなわち、当事者の意見を聞くことも、自ら証拠調べをすることもなく、わずか7日間記録を読んだだけで、被告人に「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があると一審無罪判決を否定する判断をしているのである。また、最高裁判所も「罪を疑うに足りる相当な理由がある場合で、逃亡などの恐れがあれば一審が無罪を言い渡しても記録などの調査により被告人を勾留できる」と述べ、高裁での審理の段階を問わず記録の検討だけでも被告人を勾留できるとの判断を示した。

 このような東京高裁及び最高裁の判断は、無罪判決の場合はもちろん、刑の執行猶予等の裁判の告知があった場合においても、勾留状はその効力を失う旨を規定し、無罪判決後の身柄拘束についてより一層慎重な判断を要求する刑事訴訟法第345条の趣旨に真正面から反するものである。また、一審判決の記録を読むだけで勾留を認めるのは、一審判決を軽く扱うもので不当である。

 東京高検、東京高裁及び最高裁が被告人の身柄拘束に固執する実質的理由は、本件被告人は釈放されると同時に強制退去させられることから、控訴審終了まで被告人の帰国を阻止しようという点にある。しかし、強制退去の阻止を目的とする勾留という制度は現行法上のどこにも存在せず、これが憲法および刑事訴訟法の身柄拘束手続に正面から違反することは誰の目にも明らかである。そもそも、強制退去の阻止については、出入国管理及び難民認定法の整備の問題であって、その不備を補うために刑事訴訟法の勾留を用いることを許せば、被告人は強制退去阻止の目的を越えて国内における自由すら剥奪されてしまうのである。

 本勾留決定は、無罪の判決を得た被告人を正当な目的も法律上の根拠もなくして拘束するものであり、我々は断じてこれを許してはならない。

 弁護士費用の敗訴者負担に関する緊急要請
 2000/06/12
 奈良弁護士会 会長 相良 博美

 1.日弁連速報(20)並びに本年5月31日付朝日新聞朝刊によれば、5月30日に開催された司法制度改革審議会の審議において弁護士費用敗訴者負担制度を導入することで審議会委員の意見の一致を見たとの報道がなされている。

 2.しかし、同日の審議内容について聞くところによれば、主婦連の吉岡委員、連合の高木委員、東電の山本委員らの意見は、専ら片面的敗訴者負担制度に賛成する趣旨で敗訴者負担賛成の意見を述べたとも言われており、必ずしも一般的、原則的に敗訴者負担制度の導入に賛成する意見ではなかったようである。そもそも敗訴者負担に関する意見交換は15分程度であったようであり、十分に検討吟味された結論でもなかったように思われる。

 しかるに、審議会終了後、竹下会長代理が上記報道にあるような発表をしたために、いかにも民事裁判一般について敗訴者負担を原則とすることが審議会の結論として一致したかのように報道がなされた。

 3.このように同日の審議会が果たしてどのような趣旨で敗訴者負担制度について審議を行い、意見の一致を見たのか、その正確な詳細は明らかではないが、仮に一般的、原則的に敗訴者負担制度を導入するというのであれば、それは日弁連民訴費用制度等検討協議会が昨年11月に作成した報告書の趣旨と相容れないものである。同協議会報告では、一般的な敗訴者負担制度を設けることには問題があるとの大前提で一致した上で、行政訴訟、国賠訴訟、消費者訴訟など社会的弱者と社会的強者との間の訴訟において、社会的弱者が勝訴した場合等において敗訴者に弁護士費用を負担させる、いわゆる片面的敗訴者負担制度を導入するべきであると指摘している。

 4.上記のとおり日弁連内において設置された協議会が敗訴者負担制度の導入について一定の見解を示しているなか、日弁連執行部としては同報告書の趣旨に添った見解を示すべきであり、一般的に敗訴者負担制度を導入する意見に対しては日弁連の立場を明確にする必要がある。

 司法制度改革審議会の日程では、6月13日に日弁連に対するヒヤリングがなされるとのことであるが、敗訴者負担制度の導入については軽々に同調されることのないよう、上記報告書の趣旨に添った見解を示されるよう要請する。

 司法改革に向けて奈良弁護士会は約束します
 2000/05/20

 1.昨年内閣に設置された司法制度改革審議会は、「21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現」のため、今日まで十数回に及ぶ審議を行うとともに、今後重要なテーマについて個別の審議を予定しています。

 2.他方、日本弁護士連合会は、1990年以来三度にわたり司法改革宣言を発表するとともに、1998年には「司法改革ビジョン」を、昨年11月には「司法改革実現に向けての基本的提言」を発表しました。その基調は法曹一元制度の導入を基本にして、「市民による司法」「市民のための司法」を我が国の隅々にまで浸透させるという国民主権の理念で貫かれています。それは、とりもなおさず「いつでも」「どこでも」「だれでも」必要なときには司法サービスを受けられる権利を保障できるようにしようというものです。

 3.こうした司法改革の大きな流れの中で、奈良弁護士会は牽引車の役割を果たすべく県民のニーズに応えたさまざまな活動を行ってきました。

 自治体等と提携した無料法律相談は今では県下27市町村に及び、人口比では実に84パーセントの県民が利用できるようになりました。そのほかにも、公的団体が設置した無料法律相談や臨時相談、さらには時宜に応じて女性の権利確保、商工ローン問題、欠陥住宅問題などの相談にも取り組んできました。

 裁判ではどうしても時間や費用がかかるため、交通事故の紛争については会内に示談あっせんセンターを開設し、弁護士が解決に当たる活動も積極的に行ってきました。その結果過去5年間に151件の申込があり、100件の紛争を解決してきました。

 犯罪を犯したとして逮捕され、あるいは裁判を受ける人々の権利を確保することは、憲法が保障する重要な基本的人権の一つです。その権利を守るため、奈良弁護士会では会員の殆どが国選弁護人として刑事弁護に携わっています。さらに被疑者段階や犯罪を犯した少年の権利を守るべく1990年には当番弁護士制度を発足させ、要請があれば直ちに面会に赴き、被疑者らの相談にのる体制も完備しました。こうして昨年は405回も出動し、弁護人や付添人になるなどして被疑者らの権利の擁護と更生を援助してきました。

 現在の裁判制度が非常に分かりにくいものであることを直接体験していただき、市民が参加する裁判制度に変革していくために裁判を傍聴する活動も年々広がっています。

 さらに本年4月には高齢者・障害者支援センターを発足させるなど、新たな活動も開始しました。

 こうした活動を継続、拡充するには多額の費用がかかりますが、その殆どは弁護士の自己負担でまかなわれています。

 そのほかにも自治体等公的団体の審査委員、協議会委員、懇話会委員などを多くの弁護士が担当し、公的、公益活動にも広く関与しています。

 このように県民のさまざまな要請に応えられるよう、そして裁判をはじめとする司法が真に住民の財産となるよう、奈良弁護士会は全国各地で実施される以前から会の総力を挙げて取り組んできました。

 4.こうした実績を踏まえ、さらに県民のみなさんに利用しやすい司法サービスを提供できるよう、奈良弁護士会は次の運動に取り組みます。

 第1に、自治体等の法律相談を、さらに回数も地域も増やして文字どおり県下くまなく実施し、過疎地においても公設事務所構想を始め電話や巡回による相談など、より身近に利用できるように取り組んでいきます。

 第2に、今年10月から新たに施行される民事法律扶助制度に伴い、多くの県民が日常生活に大きな負担をかけず弁護士を依頼し、裁判を受けられるよう取り組んでいきます。

 第3に、迅速且つ適切な司法サービスを提供できるよう、弁護士の人員増と能力、質の向上に励んでいきます。また、より正確で実効的な情報を県民のみなさまに提供できるよう弁護士情報の広報に努めます。

 第4に、被疑者弁護制度のさらなる拡充とともに、刑を受け終わった人々らへの援助、そして犯罪被害者の法的救済に取り組みます。

 第5に、「市民による司法」「市民のための司法」を実現し、司法が真に社会における公正と公平を実現する役割を担えるよう、法曹一元制度の導入をはじめとする司法改革に取り組んでいきます。

投稿日: 2018年1月31日

【余命三年時事日記】2340 ら特集奈良弁護士会B 2018年1月31日】2340 ら特集奈良弁護士会B 2018年1月31日

【余命三年時事日記】2340 ら特集奈良弁護士会B 2018年1月31日

ソース:2340 ら特集奈良弁護士会B 2018年1月31日
    http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/31/2340-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%86%e5%a5%88%e8%89%af%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a2/

2340 ら特集奈良弁護士会B
 
 奈良弁護士会
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 大阪市のアンケート調査の撤回を求める会長声明
 2012/03/14
 奈良弁護士会 会長 飯田 誠

 大阪市は、本年2月9日、「市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動」について「徹底した調査・実態解明」を行うためと称し、市職員に対する政治活動・組合活動等に関するアンケート実施を各所属長に依頼した。

 本依頼と一体となった橋下徹大阪市長の職員への要請文書には、「このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。」と明記されている。しかも、今回の回答方法について「速やかに集計・分析を行う必要があるため、紙での回答は受け付けません」とし、「庁内ポータルサイト」内の「アンケートサイト」利用を求めるとともに、「各職員には総務局人事課から調査依頼を個人アドレス宛てに送付」するとされている。つまり、本アンケート調査は強制力を持ち、誰が回答し、回答していないかが一目瞭然となる仕組みとなっている。

 そこで、本アンケートの内容を検討するに、全22の詳細な質問項目からなっており、組合活動や政治活動に参加した経験があるか、それが自己の意思によるのか、職場で選挙のことが話題になったか否か等について実名で回答を求めるとともに、組合活動や政治活動への参加を勧誘した者の氏名について無記名での通報を勧奨している。建前上、本アンケートは外部の「特別チーム」だけが見るとされていても、アンケート内容により処分を行うとされている以上、結局は市当局がアンケート内容を知ることに変わりはない。

 このようなアンケートは、労働基本権を侵害するのみならず、表現の自由や思想良心の自由といった憲法上の重要な権利を侵すものである。

 すなわち、まず、本アンケートが職員に組合活動の参加歴等につき詳細な回答を求めることは、実質的に労働組合にとどまり、あるいは新たに加入することに心理的圧迫を与えるもので、労働組合活動を妨害する不当労働行為(支配介入)に該当し、憲法で保障された労働者の団結権を危うくするものであることは明らかである。

 また、政治活動への参加歴や職場で選挙のことが話題にされることを一律に問題視して回答を求めることは、憲法21条によって保障された政治活動や政治的意見表明を萎縮させ、その自由を不当に侵害するものである。なるほど、地方公務員は公職選挙法により公務員の地位利用による選挙運動が禁止されており、非現業の地方公務員は地方公務員法により政党その他の政治団体の結成関与や役員就任等、勤務区域における選挙運動などが限定的に禁止されている。しかし、本アンケートの質問項目は、その禁止の範囲を明らかに逸脱しており、必要性、相当性を欠く過度な制約である。その意味でも本アンケートは不当なものである。

 さらに、本アンケートが、アンケート項目の内容が「違法行為」であるかのごとき前提で、懲戒処分付きの業務命令でなされていることに鑑みれば、同アンケートはいわば職員に対する「踏み絵」であって、憲法19条が保障する思想良心の自由を侵害するものである。

 加えて、本アンケートには、他の職員、職場の関係者ないし一般市民の言動についての質問項目が含まれており、これらについては無記名での情報提供を勧奨している。

 従って、本アンケートは当該公務員のみならず、一般市民を含むより広汎な関係者の憲法上の権利に重大な侵害を与えるものであると言わざるを得ない。大阪市においてこのようなアンケートが実施されれば、他の地方自治体にも波及し、全国の地方公務員の人権を危うくするおそれが高い。

 よって、当会は、大阪市に対し、このような重大な人権侵害を伴うアンケートの違法性を認め、撤回することを求めるものである。

 秋田弁護士会所属会員の殺害事件に関する会長声明
 2010/12/13
 奈良弁護士会 会長 朝守 令彦

 本年11月4日の早朝,秋田弁護士会に所属の津谷裕貴弁護士が,ガラス戸を割って自宅に侵入した男に刺されて死亡するという事件が発生した。津谷弁護士は,市民の立場に立ち,消費者問題に長年取り組み,日本弁護士連合会消費者問題対策委員会の委員長に就任するなど,会活動において,中心的役割を担われていた。本年7月に奈良市で開催された日本弁護士連合会消費者問題対策委員会の第21回夏期消費者セミナーにも津谷弁護士は委員長として出席され,開催の挨拶をいただいた。当会は,津谷弁護士のご冥福を祈り,ご遺族に対して心から哀悼の意を表する。

 報道によると,男は津谷弁護士が受任していた離婚調停事件の相手方だったとのことであり,刺殺事件は,同弁護士の弁護士業務に関連して発生したものと思われる。本年6月2日にも横浜弁護士会に所属する弁護士が,事件の相手方に法律事務所内で刺されて死亡するという事件が発生している。

 弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命としているが,この使命は,弁護士の生命身体の安全が確保され,自由な弁護士活動を行うことができる環境があって初めて実現できるものである。

 当会は,弁護士業務に対する暴力行為の排除及び予防に一層取り組み,今後も,これに毅然と対応し,弁護士としての使命をまっとうしていくことを,ここに表明する。

 司法修習生に対する給費制の維持を求める会長声明
 2010/07/13
 奈良弁護士会 会長 朝守 令彦

 2004(平成16)年成立の改正裁判所法に基づき、2010(平成22)年11月から司法修習生に対し給与を支給する制度(給費制)が廃止され、これに代えて、希望する者に対して修習期間中の生活費を国が貸与する制度(貸与制)が実施される予定となっている。

 ところで司法修習制度は、司法修習生が将来、弁護士、裁判官又は検察官のいずれかになるかを問わず、法の支配を実現するために必要不可欠な我が国の司法制度を担う人材を養成するという極めて重要な役割を担っている。従って、こうした人材を国費で養成することは、国の当然の責務である。

 これまでは、司法修習生を修習に専念させるため、兼職の禁止をはじめとする厳しい修習専念義務を課す一方で、その生活を保障するために給費制がとられてきた。給費制により、法曹資格は貧富の差を問わず広く開かれ、多様な人材が弁護士、裁判官又は検察官として輩出されてきた。

 しかし、給費制が廃止され貸与制に移行すれば、経済的余裕のある者でなければ法曹になれないという弊害を招くことを避けられない。司法制度改革により、法科大学院制度が導入された結果、法曹を志すものは司法修習生になるまでに多大な経済的負担を負っている。現に日弁連が2009(平成21)年11月に新63期司法修習予定者を対象に実施したアンケート結果によれば、平均318万8000円、最高1200万円の奨学金の貸与を受けていることが判明している。この様な状況下で給費制が廃止されれば、さらに経済的負担の増大は避けられず、21世紀の司法を支えるにふさわしい資質、能力を備えた人材が、経済的事情から法曹への道を断念する事態も想定され、その弊害は甚大である。

 給費制を廃止することは、高度の専門的能力と職業倫理を兼ね備えた質の高い法曹の養成を担ってきた司法修習制度の根幹を揺るがしかねない重大な問題である。

 よって、当会は、2004(平成16)年の裁判所法改正を見直し、貸与制を実施することなく、給費制を維持することを強く求めるものである。

 民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明
 2010/06/22
 奈良弁護士会 会長 朝守 令彦

 選択的夫婦別姓や婚外子の相続分差別撤廃等を内容とする民法(家族法)の改正は、14年前に法制審の答申が出されながら、現在においても実現していない。

 夫婦同姓の規定(民法750条)によって、女性の多くが婚姻の際に姓の変更を余儀なくされ、職業上も生活上も様々な不利益を被っている。先進国では婚姻後の夫婦同姓を強制しているのは日本のみである。個人のアイデンティティとして婚姻前の氏を使い続けるというライフスタイルの選択は、憲法13条等に照らし、十分に尊重されなければならない。

 2006年の内閣府の調査によると、60歳未満の年齢層では選択的夫婦別姓の導入に賛成する者が反対する者を上回っている。2009年9月以降に複数の新聞社により実施された調査ではいずれも、選択的夫婦別姓の導入に賛成の者の数は反対の者の数を上回っている。政府及び国会はこのような国民の声を真摯に受け止めるべきである。

 また、婚外子の相続分差別規定(民法900条4号)は、子自身の意思や努力によっていかんともし難い事実をもって差別をするものであり、憲法13条、14条及び24条2項に反することは明らかである。最高裁判決においても、相続分差別を撤廃すべきであるという意見が述べられている。

 さらに、女性に対する再婚禁止期間の規定(民法733条)については、その趣旨は父性の推定の重複を回避し,父子関係を巡る紛争の発生を未然に防ぐことにあるとされているが、科学技術の発達によりその根拠は既に失われている。

 加えて,婚姻年齢(民法731条)の統一も、憲法14条及び24条2項から当然に要請されることである。

 1993年以来、日本政府は国連の各種委員会から、家族法の改正に関する勧告を繰り返し受けてきた。とりわけ2009年には、女性差別撤廃委員会から、家族法改正を最優先課題として指摘され、2年以内の書面による詳細な報告を求められるなど、早期改正を行うよう厳しい勧告を受けている。

 本会は、国会において、選択的夫婦別姓の導入をはじめ、家族法の差別的規定の改正が速やかに実現されることを強く求める。

 取調べの可視化の早期実現を求める会長声明
 2010/05/17
 奈良弁護士会 会長 朝守 令彦

 捜査機関は、被疑者を代用刑事施設に留置し、弁護人の立ち会いなく孤立させて、長時間取調べる。被疑者は自分の言い分を聞いてもらえないことに絶望し、やってもいないことを「私がやりました。」と自白する。このような虚偽自白が重要・唯一の証拠であるかのように扱われた結果、えん罪が後をたたない。

 2010(平成22)年3月26日、いわゆる足利事件の菅家さんに対し、無罪判決が言い渡された。これを受けた最高検察庁と警察庁は、捜査過程の検証結果と今後の防止策を表明した。その中で、両庁は、自白偏重の捜査手法を自己批判どころか、菅家さんの「強く言われるとなかなか反論できない性格」ゆえに虚偽自白がなされた特殊な事件であったかのように位置づけ、今後は取調べの「相手方の特性に応じた取調べ方法」を用いれば虚偽自白が防げると主張する。

 しかし、足利事件のみならず、他のえん罪事件においても共通することは、被疑者は、自分の言い分を聞いてもらえないことに疲れて、やってもいない罪を認め、再び詰問されるのを恐れて、想像で犯行を供述するのである。えん罪は、被疑者の性格に関わる問題ではない。誰でもえん罪の被害者になりうる、取調べシステムの問題である。

 捜査機関は、取調べの全過程を録画すると自白が得られにくくなり、真相解明が不可能になるというが、自白がなくとも客観的証拠によれば真相解明ができるし、そうしなければならないのが刑事裁判の大原則である。取調べを録画したら自白が得られないなどと主張すること自体、密室で「見られたら困る」取調べをしていることの証左である。現在既に実施されている被疑者が自白した後の一部録画では、自白に至る過程が適正であったかを検証する術がなく、虚偽自白を塗り固めるばかりで、えん罪を助長することになる。

 えん罪は、国家による究極の人権侵害である。裁判員を含む一般国民の多くは、「捜査機関が違法な取調べをするはずがない。被疑者は、自分がやってもいないことをやったと言うはずがない。」と考えがちである。取調べの全過程の可視化こそが、違法な取調べの防止に最良かつ簡潔明瞭な手段なのである。

 本会は、内閣及び国会に対し、直ちに取調べの全面可視化に関する諸法令を制定し、完全実施することを求める。

 生活保護申請の代理に関する会長声明
 2009/06/23
 奈良弁護士会 会長 藤井 茂久

 1.厚生労働省が本年3月に策定した生活保護問答集(以下、「問答集」という)では、「代理人による保護申請はなじまないものと解することができる」との見解が表明されている。この問答集は、生活保護行政の運用の方針等を示すものとして取り扱われており、今後、全国各地の実施機関において、弁護士による代理申請を受付けない、あるいは弁護士を申請者の代理人として認めないとの対応がなされる可能性がある。
しかし、上記のような見解は不当であり、当会は到底これを容認することはできない。厚生労働省は、直ちに問答集における上記見解を削除すべきである。

 また、各実施機関は、今後も、申請者から委任を受けた弁護士を申請者の代理人として認め、そのように取り扱うべきである。

 2.上記問答集において厚生労働省は、「生活保護の申請は、本人の意思に基づくものであることを大原則としている」ことを理由に挙げるが、全く失当である。

 代理人たる弁護士は、当然、本人の意思を確認した上で申請に及んでいるところである。また、生活保護の申請行為の代理も、権利義務ないし法律関係の存否等に関する紛争を取扱うものである点で「一般の法律事務」として弁護士法3条が規定する弁護士の職務に含まれ、これをあえて除外すべき理論的根拠もない。

 3.ところで、生活保護行政におけるいわゆる「水際作戦」等の違法な運用に対し、弁護士が代理人として生活保護申請をする等の活動を行うことによって要保護者の権利が擁護された例は、枚挙に暇がない。奈良県においても同様であり、高齢者や障がい者等を含む生活困窮者の代理人として生活保護申請に関わることで、ようやく受給が開始された例が少なからず存在する。

 そもそも、生活保護行政においては、申請者に対し、実施機関による助言・教示が適切に行われておらず、その結果、生活保護受給は国民の正当な権利であるにもかかわらず、要保護者本人だけでは、なかなか行使できないのが実態である。このようなときこそ、弁護士が代理人として保護申請を行う等の支援・援助が必要となる。法テラスが、弁護士による生活保護の申請代理を日弁連委託援助業務の対象として取り扱っているのも、このような実態を前提としている。

 4.厚生労働省の上記見解は、生活保護受給へ向けた弁護士による支援・援助をも強く制限するもので、ひいては憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」すら脅かしかねない。

 取調べの可視化(取調べの全過程の録画)実現を求める会長声明
 2008/06/23
 奈良弁護士会 会長 藤本 卓司

 違法な取調べを根絶するには可視化しかない。

 不当な取調べを根絶するには可視化しかない。

 そもそも、自白を強要することは憲法38条に違反する。

 ところが、被疑者等の取調べは取調室という密室で行われているために、被疑者等が捜査官によって虚偽の自白をさせられたり、捜査官が被疑者等の供述と違う内容の調書を作成したりすることが少なくない。

 免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件のいわゆる死刑・再審無罪4事件だけでなく、最近の宇和島事件、志布志事件、氷見事件、北方事件からも明らかなように、虚偽の自白を誘発する違法・不当な取調べは現在でも行われている。

 密室での取調べにおいて何が行われたか、については客観的に証明する手段がない。そのため、捜査段階で虚偽の自白が強制されて供述調書が作成されてしまうと、後に公判廷において、その任意性や信用性を争っても、取調官や被告人等の尋問に膨大な時間が費やされることになり、裁判は長期化し、冤罪を生んでしまう。

 密室における自白強要を防止し、取調べの適正を確保する最善の方法は、被疑者等の取調べの全過程を録画することである。

 この取調べの可視化は、今や世界の潮流であり、イギリス、オーストラリア、アメリカの各州、イタリア、香港、台湾、韓国、モンゴル等で取調べの録画や録音が実施されている。

 わが国では、2009年5月21日から、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が実施される。取調べの全過程を録画すれば、密室での取調べ状況を客観的に把握でき、自白の任意性や信用性の審理を合理化することができる。裁判員に加重な負担をかけないで裁判員裁判を円滑に実施するためにも、取調べの可視化は早急に実現されなければならない

 現在、検察庁は、検察官による取調べの一部を試行的に録画している。警察庁も取調べの一部録画の試行を予定している。しかし、これらの一部録画は、自白調書作成後に取調べ状況を確認するだけのものにすぎず、違法・不当な取調べを抑止することはできない

 取調べの適正化を図り、自白の任意性・信用性の審理を合理化し、虚偽自白に基づく冤罪を根絶するためには、検察官による取調べのみならず、警察官による取調べも含めた全ての取調べの可視化を実現するしかない。

 奈良弁護士会は、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の実現を強く求める。

 少年法「改正」法案に反対する会長声明
 2008/05/20
 奈良弁護士会 会長 藤本 卓司

 1.政府は、本年3月7日、少年法の一部を改正する法律案(以下「同法案」という。)を国会に上程した。

 同法案は(1)一定の結果が重大な犯罪について、犯罪被害者等による少年審判の傍聴を認めること、(2)記録の閲覧・謄写につき、その要件を現行法よりもさらに緩和することなどを内容とする。

 しかし、当会は、以下の理由から同法案に反対する。

 2.少年法は、「少年の健全育成」(1条)を目的とし、少年の保護・教育の優先をうたっている。

 これは、少年が成長発達の途上にあり、可塑性に富むことから、可能な限り教育による改善更生を図ることが再犯の防止にも有効であり、少年の成長を支援することが出来るとの考え方に基づくものである。

 このような目的を実現するため、少年審判は、非行事実の認定のみならず、非行をおこすに至った背景・要因を正確に把握し対処することが必要とされる。

 そのため、少年審判は「懇切を旨として、和やかに行う」(22条1項)とされている。これは、事件をおこした少年が生育環境や資質・性格に大きな問題をかかえていることを踏まえ、まず少年からその悩みや不満、家族やプライバシーに関する事項を萎縮することなく率直に述べてもらうためである。

 そして、少年の率直な発言をきっかけに、少年の持つ問題点を浮き彫りにし、その未熟さを自覚させる過程を経て、はじめて少年は自らがもたらした被害に向き合い、内省を深めることができるようになる。

 ところが、被害者等が審判の傍聴をした場合、精神的に未熟で社会的経験も乏しい少年は、心理的に萎縮して、率直に自分の生育歴や思いを語ることができなくなるおそれが大きい。特に審判は、事件発生から間もない時期に開かれるため、少年のみならず、被害者等にとっても心理的動揺がまだ大きい状況にあり、そのような状況下で被害者等が審判を傍聴することにより、少年審判は緊張した雰囲気とならざるを得ず、少年法の理念に基づいた審判運営は極めて困難となる。

 また、裁判官や調査官、附添人などの関係者は、少年と親族のプライバシーに配慮せざるをえなくなり、少年の生育歴や家族関係の問題といったプライバシーに深く関わる事項を取り上げることが困難となり、非行の原因を十分に掘り下げることができず、かつ適切な処分を選択することが出来なくなる。

 3.また、同法案は、閲覧・謄写の要件を現行法よりも緩和し、閲覧・謄写を原則可能とし、対象となる記録の範囲も法律記録の少年の身上経歴等に関する部分にまで拡大している。

 しかし、このような法改正は、少年や親族等の関係者のプライバシーを害するおそれが高く、その後の少年の更生を困難にしかねない。現行法の運用上、被害者等による記録の閲覧・謄写は十分に機能しており、これ以上に閲覧・謄写を原則可能とし、対象となる記録の範囲を拡大する必要性はない。

 4.被害者等の保護・支援は重要であり、被害者等の事実を知りたいという心情も尊重されるべきである。しかし、以上のとおり同法案は少年法の基本理念を根本から脅かすものであり、あまりに弊害が大きい。

 被害者等の支援は、関係各機関が連携し、2000年(平成12年)少年法改正で導入された、被害者等による記録の閲覧・謄写、被害者等の意見聴取、審判の結果通知の各規定の存在をさらに丁寧に知らせるとともに、被害者に対する経済的、精神的支援制度を早期に充実することによるべきである。

 5.以上のとおりであり、当会は、(1)被害者等に少年審判の傍聴を認めること、(2)記録の閲覧・謄写の要件を緩和することに関する同法案に強く反対するものである。

 憲法改正手続法の抜本的な修正を求める会長声明
 2007/05/29
 奈良弁護士会 会長 田中 啓義

 「日本国憲法の改正手続に関する法律」は、2007年4月13日の衆議院本会議に引き続き、5月14日の参議院本会議で慎重な審議を求める多数の国民の意見に反して採決がなされ、与党の賛成多数で可決成立となった。

 同法は、国民が主権者として、国の最高法規である憲法の改正案を承認するかどうかの意思を表明する憲法改正国民投票の手続を定めるものであり、その内容をどのように定めるかは、国民投票の結果に重大な影響を及ぼすものである。そのため、慎重な審議を求める声が多くの国民から寄せられ、地方公聴会や参考人質疑でも、法案への賛否の立場を越えて慎重な審議を求める声が一致して出されていた。しかるに、衆議院においては、中央公聴会が2回、地方公聴会が大阪と新潟の2箇所で開かれたのみで、参議院においては連日の委員会の開催で拙速に審議を進め、中央公聴会も開かずに審議を打ち切り、委員会及び本会議の採決をしたことは極めて遺憾である。

 そして、成立した法律は、衆議院段階で一部修正がなされたものの、(1)最低投票率を定める規定がなく、ごく少数の賛成により憲法改正がなされるおそれがあること、(2)投票日前14日間、テレビ・ラジオの有料意見広告を一律に禁止することは、表現の自由に対する過度の規制である一方で、それまでの期間は何ら規制が加えられておらず、資金力ある政党・団体が有料意見広告を独占的に行うおそれを排除できないこと、(3)公務員・教育者について広汎な運動規制がかかり、自由であるべき憲法改正問題についての論議の萎縮が起こること、(4)一括投票の余地が残されていること、(5)国民投票広報協議会の構成が各議院における各会派の所属議員の比率により選任されるため、反対意見が適切に反映されないおそれがあることなど、多くの問題点が残されたままとされた。

 参議院の憲法調査特別委員会では18項目に及ぶ付帯決議が採択されたが、この中には、「低投票率により憲法改正の正当性に疑義が生じないよう、憲法審査会において本法施行までに最低投票率制度の意義・是非について検討を加えること」「公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の規制については・・・禁止される行為と許容される行為を明確化するなど、その基準と表現を検討すること」「罰則について、構成要件の明確化を図る等の観点から検討を加え、必要な法制上の措置も含めて検討すること」「憲法改正原案の発議にあたり、内容に関する関連性の判断は、その判断基準を明らかにするとともに・・・適切かつ慎重に行うこと」など、本来であれば法案審議の中で明らかにされ、本法の条文に盛り込まれるべき事項が少なからず含まれている。

 いうまでもなく、憲法改正は国のあり方を決定する重大問題である。本法についての国民的論議は緒についたばかりといっても過言ではなく、広く国民的議論を尽くすことが必要である。

 当会は、憲法改正を最終的に国民に委ねている憲法第96条の趣旨が十二分に生かされるよう、本法施行までの3年間に、上記の問題点等について慎重に再検討を重ねて、抜本的な修正がなされることを強く求めるものである。

 「少年法等の一部を改正する法律案」の参議院での慎重審議を求める会長声明
 2007/05/09
 奈良弁護士会 会長 田中 啓義

 現在、少年法のいわゆる第2次改正法案が衆議院を通過した後、参議院において審議されようとしている。

 当会は、「奈良県少年補導に関する条例」に反対する活動を通じて、子どもたちが広く無限定に警察官の規制・取り締まりの対象となることに対し警鐘を鳴らしてきた。また、同時に、問題を抱えた子どもたちにとって本当に必要なのは、子どもの人格を尊重しその健やかな成長を支援する福祉的施策であると主張してきた。
したがって、上記の改正法案において、特に、当初の政府提出法案から「ぐ犯少年である疑いのある者」に対する警察官の調査権限を定める点が削除されたことは評価に値する。

 しかし、一方で、同改正法案は、少年院送致年齢の下限の引き下げ等を未だ含む点で、立法事実の検証がなされていないにも拘わらず厳罰化の発想を残すものであ り、この点は賛成できない。また、触法少年に対する警察官の調査権限を定めるにも拘わらず、調査への弁護士の立会いを認めるないし調査の全過程をビデオ録画するといった「可視化」については何ら手当てがなされておらず、この点でも問題点を残す。

 したがって、当会は、参議院において、これら改正法案の問題点について、より一層慎重な審議が行われ、全ての問題点が解消されることを要望する。

 犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することができる制度に反対する会長声明
 2007/03/13
 奈良弁護士会  三住 忍

 1.2007年2月7日、法制審議会は、法務大臣に対して、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための法整備に関する要綱(骨子)」を提出した。

 この答申は、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつ及び強姦の罪,業務上過失致死傷等の罪、逮捕及び監禁の罪並びに略取、誘拐及び人身売買の罪等について、参加を申し出た被害者や遺族(以下「犯罪被害者等」という)に対し、「被害者参加人」という法的地位を付与し、公判への出席、情状に関する事項についての証人に対する尋問、自ら被告人に対して行う質問、証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述を認める被害者参加制度を創設することを求めている。

 2.しかし、この被害者参加制度は、犯罪被害者等について、「事件の当事者」から、「被害者参加人」という訴訟当事者又はそれに準ずる地位を容認するものであり、刑事訴訟の構造を根底から変えるものである。

 起訴状に被害者として記載された者が真に被害者か否かは、刑事裁判の判決において初めて判断されるものである。

 とりわけ、無罪を主張して、被害の有無それ自体を争う場合に、起訴状に記載された被害者を刑事訴訟に参加させて訴訟活動に参加させることは、無罪の推定の原則や予断排除の原則に抵触すると言わざるを得ない

 3.近代刑事司法は私的復讐を公的なものに昇華させ、被告人は国家が処罰することにより、被害者は加害者からの再復讐から守られ、被害者と加害者との報復の連鎖を防ぎ、もって社会秩序の維持を図ろうとしている。

 ところが、犯罪被害者等が刑事法廷で被告人と直接対峙すると、被告人に対する犯罪被害者等の言動が被告人の反発を招きかねず、また、被告人の中には、犯罪被害者等の訴訟活動によって自分が有罪とされ、あるいは重く処罰されたと考えて、逆恨みや報復感情を抱く可能性がないとは言えない。

 このように犯罪被害者等が被告人と刑事法廷で直接対峙することは、近代刑事司法が断ち切ろうとした報復の連鎖を復活させることになりかねない。

 4.被告人は、無罪推定の原則により、刑事法廷において、予断と偏見をできる限り排除して、自由に供述することができなければならない。

 しかし、犯罪被害者等が、常時、被告人と直接対峙する形で刑事法廷に出廷することになれば、被告人には大きな心理的圧力がかかり、自由に弁解や反論をすることができなくなることが予想される。

 5.刑事訴訟は、客観的な証拠により犯罪事実の存否や量刑が決められるが、犯罪被害者等は必ずしも全ての証拠を把握しているわけではなく、検察官とは情報量や立場が異なっており、証拠に基づく訴訟活動を期待すること自体に無理がある。

 また、裁判員制度の下においては、犯罪被害者等の主張や陳述、応報感情に基づく弁論としての意見陳述が刑事法廷でなされることにより、初めて刑事法廷に臨む市民である裁判員が戸惑い、冷静な判断をすることができなくなるおそれがある。

 6.犯罪被害者等の要望に応えるためには、まず、検察官と十分にコミュニケーションを図り、犯罪被害者等への情報提供や検察官の訴訟活動について意見を述べる機会を確保できる制度を創設すべきである。

 また、十分な法的知識を持たず、捜査機関などによる二次被害に苦しめられる危険性に晒されている犯罪被害者等に対して、公費による弁護士支援制度を導入すべきである。

 7.第166通常国会には、被害者参加制度の創設を含む刑事訴訟法改正案が上程されることが予定されているが、奈良弁護士会は、被害者参加制度の導入に反対し、国会における慎重な審議を求めるものである。

 教育基本法改正に反対する会長声明
 2006/11/13
 奈良弁護士会  三住 忍

 1.政府は、本年4月28日、教育基本法「改正」法案(以下「法案」という)を国会に上程し、衆議院「教育基本法に関する特別委員会」にて継続審議となっている。今秋の臨時国会において、政府は、同法案の成立を最重要課題と位置付けて取り組むことを明らかにしている。

 ところで、教育基本法は、その前文で、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」と規定するように、「準憲法」的性格を持つ極めて重要な法律である。したがって、これを改正することについては、特に慎重でなければならない。

 しかし、法案は、既に日本弁護士連合会が本年9月15日付意見書で明らかにしているとおり、様々な問題点を有している。当会も、同意見書の内容を踏まえ、以下の意見を表明するものである。

 2.当弁護士会は、本年5月20日、総会の場において「憲法の基本理念を堅持する宣言」を採択した。同宣言は、現行憲法の基本理念たる「立憲主義」を堅持すべきことを訴えるとともに、現在の改憲案の多くが、国家権力を規制するという憲法の基本的性格を曖昧にし、国家主義的な傾向を明らかにしていると指摘した。そして、今回の法案は、その基本的発想において、これらの改憲案と共通している。

 すなわち、法案は、「教育の目標」として、「公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」や「伝統と文化の尊重」、「我が国と郷土を愛する態度を養うこと」等を規定するとともに(2条)、「学校においては、教育の目標が達成されるように…体系的な教育が組織的に行われなければならない」としている(6条2項)。しかし、そこで「目標」として掲げられた「公共の精神」や「伝統と文化の尊重」、「我が国と郷土を愛する態度」といった事柄は、本来、多様性を持つ多義的な概念であって、一義的に決定できないはずのものである。然るに、法案は、これらの徳目を法定するとともに、現行法が教育の目的ないし方針として掲げる「個性ゆたかな文化の創造」(現行法前文)、「個人の価値をたつと」ぶこと(同1条)及び「自発的精神」(同2条)といった言葉をいずれも削除してしまった。このことは、法案の目ざすものが、国家が定める特定の価値観を身につけた「標準日本人」づくりにあることを意味する。
しかし、一人一人の「個性」が認められることなくして、「個人の尊重」(憲法13条)は実現しえない。法案は、憲法13条の「公共の福祉」を特定の価値観を前提にした「公益及び公の秩序」に改めようとする改憲案と同じく、立憲主義の理念と根本的に相容れない。それは、戦前と同様、教育の場を通じて、子どもたちに為政者の求める「お国のため」の論理に従わせることを可能とするものである。

 3.また、現行教育基本法10条は、戦前教育の過度の国家的介入と統制への反省の上にたち、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と規定するとともに、「教育行政は…必要な諸条件の整備確立を目標として行われ」るものと規定した。しかし、法案は、「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべき」との規定を削除するとともに、国と地方公共団体が、役割分担と協力の上で教育を行い、教育に関する施策を策定するものとしている(法案16条)。このような改正は、新たに設定された「教育の目標」を達成するための国家的体制の実現を許容することになりかねない。

 4.当会は、上記宣言と同日、「『奈良県少年補導に関する条例』の施行に反対する総会決議」を採択した。本条例は、未成年者の広範囲にわたる行為を「不良行為」と定め、これを発見したときにこれを止めさせる努力義務及び警察職員等に通報する努力義務を県民一般に課すとともに、警察職員の権限を拡大して少年に対する監視・規制・取り締まりを強化するものである。しかし、そもそも「不良」とは、特定の価値観を前提に、それに従わないことを意味する。これを警察職員の権力行使の対象とすることは、上記の法案ならびに改憲案と同一の発想に立つものである。法案は「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする」と規定するが(13条)、これが全国的な補導法制ならびに上記条例と密接な関連性を持つ可能性が高い。当会としては、このような可能性を持つ本法案を看過することはできない。

 5.そもそも、本改正案については、このような改正を是非とも必要とする理由が審議のうえで明らかにされていない。

 確かに、現在の教育制度やその運用実態が国民のニーズに応えた理想的なものであるかどうかについては、多様な議論がある。いじめ被害の頻発等、改善に取り組まなければならない課題も多い。しかし、だからといって、今回提案されているような教育基本法そのものの改正が必要であるかどうかは大いに疑問である。この点についての議論は未だ十分になされているとはいえない。

 6.法案が以上のような問題を孕むものであることに鑑みるならば、当会としては、これに反対せざるを得ない。また、今後、教育及び教育基本法の在り方が問題にされるとしても、拙速に流れることなく、同法の「準憲法」的性格にふさわしい、慎重な取り扱いがなされることを望む次第である。

 「奈良県少年補導に関する条例」についての会長声明
 2006/03/24
 奈良弁護士会  福井 英之

 本日、奈良県議会において、「奈良県少年補導に関する条例」(以下、「本条例」という。)が賛成多数により可決された。

 しかし、これまでの当会会長声明、近畿弁護士会連合会決議及び日本弁護士連合会会長声明で既に指摘されているとおり、本条例には種々の重大な問題点がある。しかも、昨年11月に県警により本条例の要綱案が発表されてから今日に至るまでの経緯に鑑みれば、上記のような本条例の問題点について、県民に対する十分な周知及び県民の間での十分な議論を経ないまま、拙速に制定に至った感は否めない
 
 そこで、当会は、本条例の制定に対し遺憾の意を表明するとともに、奈良県議会ないし奈良県知事に対し、本条例の速やかな廃止あるいは施行の凍結を求めるための取り組みを継続する所存である。

 ゲートキーパー立法に反対する会長声明
 2006/03/09
 奈良弁護士会  福井 英之

 1.FATF(OECD加盟国を中心とする政府間機関である「金融活動作業部会」の略称)は、マネーロンダリング及びテロ資金対策を目的として、従前から対象としていた金融機関に加え、弁護士等の専門職に対しても、不動産の売買等一定の取引に関し、「疑わしい取引」を金融情報機関に報告する義務を課すことを勧告した。

 これを受けて、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、平成16年12月、「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、その中でFATF勧告の完全実施を決めた。さらに、政府は、平成17年11月17日、FATF勧告実施のための法律の整備の一環として、金融情報機関を金融庁から警察庁に移管することを決定した。

 2.しかしながら、弁護士に依頼者の「疑わしい取引」に関する報告義務を課すことは、弁護士の守秘義務を侵すのみならず、弁護士の存立基盤である国家権力からの独立性を危うくし、弁護士に対する国民の信頼を損なうことにつながるから到底容認できない。弁護士の職責は、国家権力から独立し、ときには国家権力と一定の対抗関係に立って国民の人権と法的利益を擁護するところにある。

 そのため、弁護士は国家権力から独立した専門家としての地位が保障されるとともに、職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、依頼者に対して高度の守秘 義務を負うものとされている。

 「疑わしい取引」を金融情報機関に報告する義務を課すゲートキーパー立法は、かかる弁護士制度の基盤を根底から覆すものである。諸外国の弁護士及び弁護士会においても、FATF勧告は弁護士制度の根幹を揺るがすものとしてその実施に反対し、FATFの重要な加盟国であるアメリカやカナダでは勧告による立法はなされておらず、ベルギーやポーランドでは違憲訴訟が係属しているのが現状である。

 3.そもそも、「疑わしい取引」を金融情報機関に報告することを義務づける法制度の下では、依頼者は弁護士に安心して全ての事実を打ち明けることができなくり、弁護士と依頼者の基本的な信頼関係は破壊される。さらに、弁護士は事実関係の全容を把握できなくなる結果、依頼者は弁護士からの適切な助言を受けることができなくなる。加えて、依頼者が弁護士に真実を話さなくなれば、弁護士は依頼者が法律を遵守して行動するように適切な指導をすることができなくなり、依頼者による違法行為という結果を招くリスクも生じる。

 従って、依頼者の違法な行為を金融情報機関に通報することによる違法行為の予防、抑止の効果よりも、多くの依頼者が適切な法的アドバイスを受けられなくなるリスクの方が格段に大きい。

 4.もちろん、当会は、マネーロンダリングやテロ資金対策を否定するものではなく、弁護士がそれらに関与させられることがないよう継続的に研修を実施し、また、弁護士がそれらに関与すれば懲戒処分をもって臨む。

 しかしながら、ゲートキーパー立法は、弁護士制度の基盤を根底から覆し、弁護士に対する国民の信頼を損ない、依頼者が秘密の内に適切な法的アドバイスを受ける権利を侵害するという重大な問題を含んでいる。まして、各弁護士が直接 警察庁に刑罰の威嚇をもって通報を義務づけられる制度を作るとすれば、弁護士が警察機関と対抗して刑事弁護活動等を行う上での制度的独立を危くし、弁護士の警察権力からの独立を損なう可能性がある。

 よって、当会はゲートキーパー立法に反対する。

 「奈良県少年補導に関する条例(案)」に反対する会長声明
 2006/03/09
 奈良弁護士会  福井 英之

 1.はじめに

 現在開会中の奈良県議会において、「奈良県少年補導に関する条例(案)」が上程されている。

 この「奈良県少年補導に関する条例(案)」(以下、単に「本条例案」という。)には重大な問題点があるので、当会は、その問題点を指摘したうえ、このような条例の制定に反対するものである。

 2.本条例案の問題

 本条例案は、「不良行為少年の補導に関し、保護者及び県民の責務を明らかにするとともに、警察職員及び少年補導員の活動に関して必要な事項を定め、もって少年の非行の防止と保護を通じて少年の健全な育成を図ること」をその目的とするという。

 少年の健全育成及びそのための少年非行の防止それ自体は重要な社会の利益である。しかし、奈良家庭裁判所管内における少年一般保護事件の年間新受件数は、ここ数年ほぼ減少傾向にある。また、上記新受件数と、奈良県と人口が近似する他の県に対応する家庭裁判所管内における同事件の年間新受件数とを比較しても、奈良県の件数がことさらに多いとはいえない。すなわち、奈良県において特に少年非行の深刻な増加をいうべき根拠となる事情はなく、したがって、以下のように問題点の多い条例を今あえて制定すべき必要性はない。

 また、少年非行の防止を実現するための手段として、本条例案は警察権限を拡大し少年の行為に対し広範な規制を及ぼすことを予定しているところ、このようなやり方は、適切な手段とはいえない

 第一に、少年非行防止のための成長支援の本来的あり方は警察権限による規制ではなく教育・福祉的政策であることは既に世界的潮流であり、2001年11月に奈良で開催された日本弁護士連合会主催第44回人権擁護大会においても、このような流れをふまえて、「子どもの成長支援に関する決議」を採択し、その中で、「少年犯罪の防止のために大人に求められていることは、子どもの悩みやストレスを早期に正面から受け止め、一人ひとりの子どもの尊厳を確保し、その力を引き出すことであ」り、そのためには、「学校や地域社会、福祉機関、医療機関、保健所などは、子どもに対する人権侵害を見逃さず、関係機関との連携を強めて、これに対処すべきであ」るとの提言を行っているところである。

 単に規制・威嚇を強めることでは少年非行問題は解決しない。強制権限を背景に持つ警察官が、条例に規定される「不良行為」に該当するとして少年に対し権力的・画一的指導を行ったとしても、それは、少年が自ら抱える問題点を認識し、これを積極的に改めていこうとする真の更生への契機にはならない。問題行動には、子ども自身の悩みや劣等感が顕れていることが多い。したがって、更生への契機として真に必要なのは、個々の少年が抱える問題に応じてきめ細やかな対話・ケアを行い、少年が自己肯定感を持てるようにすることなのである。

 そのために必要な学校教育の充実、児童相談所の人員・予算増加を含む態勢・活動の充実、未就職者に対する就職の機会の提供等、先に取り組まれるべき福祉施策をなおざりにしたまま、ただ規制を強化するのみでは、少年非行の防止及び保護という目的は達成されない。

 第二に、本条例案は、県民が不良行為少年を発見したときにこれを止めさせる努力義務及び保護者等に通報する努力義務を定める。

 しかし、本条例案のいう「不良行為」とはあくまで非犯罪行為であるから、それにも拘わらず、このような行為を止めさせる努力義務及び保護者等に通報する努力義務を定めるとすると、それを望まない県民の内心の自由が不当に侵害されることとなる。また、県民一般にこのような義務を課せば、問題を抱える少年及びその家族と地域住民を含む県民とを、条例による強制のもと、行動を監視し、制限し、挙げ句は通報する側とされる側として対立するような状況に置くことは必至である。このような息苦しい状況が非行防止及び立ち直り支援に資するとは到底思われない。むしろ、問題を抱える少年及びその家族を、地域社会から疎外してしまうことにもなりかねないし、このような方向性は、地域社会が一体となっての子育て支援を掲げて県が一方で進めている「新結婚ワクワクこどもすくすくPlan(奈良県次世代育成支援行動計画)」とも整合しない。
 
 3.まとめ

 以上のように、本条例案については、様々な看過できない問題点が存するので、当会は、これに対して反対の意見を述べるものである。

 謀罪新設に反対する会長声明
 2005/11/17
 奈良弁護士会  福井 英之

 当会は、第163国会(特別会)に提出されている「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」第2条(組織的な犯罪の処罰に)「組織的な犯罪の共謀」の新設に反対する。

 この共謀罪は、「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織」により行 われる犯罪の遂行を共謀した者で、その犯罪が死刑無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪、あるいは長期4年以上10年以下の懲役 又は禁錮が定められている罪にあたる場合にこれを処罰しようとするものである。共謀罪は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を国内法化するための規定である。
しかし、この法律案には次のような重大な問題点がある。<

 1.単なる日常会話も処罰の対象となりうる危険性がある。

 共謀罪は、実行行為に着手する以前の予備行為も要件とされておらず、犯罪実行の合意という外形があれば共謀と見なされ、同罪が成立すると見なされる可能性がある。単に思っていること、言うことと、それを行動に移すことは全く別のことであ る。ところが、共謀罪により、日常生活において何気なく交わされる犯罪にかかわる会話さえもが、当事者にそれを本気で実行する意思がなくても当該犯罪を実行したものに類する形で処罰の対象となる危険性がある。

 2.処罰範囲が極めて広範になる危険性がある。

 法務省は、「組織的な犯罪の共謀罪」には、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為に限り処罰すると主張しているが、法律案上は「団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われたものの遂行を共謀した者」と規定されているに過ぎない。

 上記条約上、対象となる犯罪が「性質上国際的なものであること」、「組織的な 犯罪集団」の関与するものであること等の要件が必要とされているのと対比しても、 共謀罪の規定が適用される組織、団体について明確に限定された定義がないため、処罰の対象となる組織、団体は広範にならざるを得ない

 また、対象犯罪は、長期4年以上の懲役又は禁錮にあたる重大な犯罪が対象となっているため、対象となる罪名は550を超えるといわれており、その対象となる犯罪は極めて広範である。

 3.捜査方法が無限定に拡大する危険性がある。

 共謀罪の捜査については、客観的、物的な証拠がなく、捜査機関の捜査に困難を来すことが予想され、そのため、通信傍受法の適用が拡大される等、電話等の通信手段の傍受が捜査の名において拡大する危険性がある。

 4.憲法上の権利、自由の制限の危険性がある

 以上のような様々な問題点に鑑みれば、共謀罪は、国民の自由な表現活動、団体 結社、宗教活動など、憲法上保障された権利、自由に対する不当な制限を課する手段 となる危険性を内包すると言わざるを得ない。

 以上のような理由により、当会は共謀罪の新設に強く反対するものである。

投稿日: 2018年1月31日

【余命三年時事日記】2339 ら特集山梨弁護士会C 2018年1月31日

【余命三年時事日記】2339 ら特集山梨弁護士会C 2018年1月31日

ソース:2339 ら特集山梨弁護士会C 2018年1月31日
    http://yh649490005.xsrv.jp/public_html/2018/01/31/2339-%e3%82%89%e7%89%b9%e9%9b%86%e5%b1%b1%e6%a2%a8%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e2%91%a3/

2339 ら特集山梨弁護士会C
 
 山梨県弁護士会
 ttp://www.yama-ben.jp/

 憲法記念日〜施行61周年〜を迎えて

 この5月3日(憲法記念日)をもって憲法施行61周年を迎えました。そこで、憲法に関して、私が学んできたことと最近考えていることを述べさせて頂 きます(この「会長談話」は、常議員会の承認を得た「会長声明」と異なり、山梨県弁護士会としての意見ではなく、個人的な見解です。)

 1.憲法とは何か〜法律と何が違うのか〜

 法律は、国家権力(現代のわが国では国会)が定め、国民に対し、義務を課したり、権利を制限したりするものです(他の効果を定める法律もありますが)。これに対し、憲法は、国民が定め、国家権力に対し、義務を課したり、権力を制限したりするものです。

 それゆえ、まず、憲法99条で「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定められているのは、国民ではなく、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」なのです。また、憲法が尊重されず、「その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為」が定められたりしても、「その効力を有しない。」(憲法98条)のです。

 すなわち、私たち国民一人一人は、小さな存在で、国家は、法律を定めることで、何でも自由にできそうですが、その国家の権力を縛り、国民の基本的人権を保障しているのが、憲法です。

 2.憲法9条1項は国家の何を禁止しているか

 憲法9条1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めています。

 この「武力の行使」の禁止に関し、「他国による武力の行使」への参加に至らない協力(輸送、補給、医療等)について、国(政府)の解釈は、その「他国による武力の行使と一体となるようなもの」は、自らも「武力の行使」を行ったとの評価を受けるもので、憲法上許されないが、一体とならないものは、許されるという解釈(いわゆる一体化理論)です。

 3.憲法は平和的生存権を保障しているか

 また、憲法前文には、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあります。

 そして、「憲法前文が上記のとおり『平和のうちに生存する権利』を明言している上に、憲法9条が国の行為の側から客観的制度として戦争放棄や戦力不保持を規定し、さらに、人格権を規定する憲法13条をはじめ、憲法第3章が個別的な基本的人権を規定していることからすれば、平和的生存権は、憲法上の法的な権利として認められるべき」(下記名古屋高裁判決)であると考えます。

 4.イラクにおける航空自衛隊空輸活動についての4月の名古屋高裁判決

 イラクにおける航空自衛隊による多国籍軍の武装兵員空輸活動について、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟において、名古屋高等裁判所の平成20年4月17日の判決は、次のような画期的判断を示しました。

 ?「武力行使」禁止に関して

 まず、バグダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当するとした上で、「航空自衛隊の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員をバグダッドへ空輸するものについては、…他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる。」「よって、現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」という判断を示しま した。

 ?平和的生存権に関して

 「平和的生存権は、現代において憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしには存立し得ないことからして、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利である」として、前記3項のとおり、「憲法上の法的な権利」とした上で、「裁判所に対してその保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求し得るという意味における具体的権利性が肯定される場合がある」という判断を示しました(ただし、差し止め請求については、不適法却下とされ、また、損害賠償請求については、本件派遣によって具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められず、損害賠償請求で認められる程度の被侵害利益がいまだ生じているとはいえず、棄却されました)。

 5.憲法と政治問題(日本弁護士連合会の主張など)

 折しも、この5月1日で,アメリカのブッシュ大統領がイラクでの主要な戦闘の終結を宣言してから、満5年が経過しました。しかし、イラクでは、戦闘が絶えず、米英軍は,その後もイラクに駐留し続けています。そして、その戦死者は、米軍だけで4000名を超えました。

 アメリカの憲法には、わが憲法9条のような規定はありません。したがって、アメリカでは、軍隊をイラクへ派遣することも国家が自由にできることであり、イラクから撤退をするか否かも、純粋な政治問題です。

 しかし、わが国には、憲法9条があります。したがって、自衛隊をイラクへ派遣することができるか否かは、純粋な政治問題ではなく、憲法の問題です。

 それゆえ、日本弁護士連合会は、自衛隊をイラクへ派遣することを目的とするイラク特措法について、これが国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きいものであることにより反対であると主張してきてきました。そのうえで、自衛隊の派遣先がイラク特措法が禁じる「戦闘地域」であることも指摘し、繰り返しイラクからの撤退を求めてきました。したがってまた、日本弁護士連合会は、上記名古屋高裁判決に ついて、会長声明で、高く評価すると共に、政府に対し、判決の趣旨を十分に考慮して自衛隊のイラクへの派遣を直ちに中止し、全面撤退を行うことを強く求めているのです。

 2008年5月3日
 山梨県弁護士会会長 石川 善一

 「犯罪被害者等による少年審判の傍聴」に反対する会長声明

 平成20年2月13日、法制審議会は、原則非公開である少年審判で被害者や遺族の傍聴を認めることを内容とする少年法改正要綱を法務大臣に答申した。

 当会は、一定の重大な犯罪類型に限定するとはいえ、犯罪被害者等による少年審判の傍聴を認める規定を創設すべきではないと考え、改正要綱には反対する。その理由は、以下の通りである。

 少年は、成長発達の途上にあり、精神的に未成熟である。犯罪被害者等が審判を傍聴することになれば、少年は精神的に萎縮し、審判廷でありのままに心情を語ったり、事実関係の食い違いを指摘することが困難になる。

 少年審判は事件発生から短期間で開かれるため、被害者等にとって事件から受けた心理的な衝撃がいまだ大きく、少年も事件を起こした精神的動揺が収まっていない。この点、改正要綱は、傍聴できる場合を一定の重大事件に限定している。しかし、そのような重大事件であればなおさら、被害者等の衝撃は大きく、自ずと加害少年に対する視線は厳しくなる。少年の精神的動揺も尋常ではない。そのため被害者等による傍聴は、少年に多大な緊張や過度の心理的圧迫をもたらし少年を精神的に萎縮させてしまうおそれが大きい。これにより、少年の弁解が封じ込められ、誤った事実認定のおそれすら生じてしまう。

 また、被害者等が傍聴している状況においては、少年や保護者、あるいは審判官や家庭裁判所調査官が少年の生育歴や家族関係の問題など、プライバシーに深く関わる事項について、率直に陳述し、これを取り上げることがはばかられることになりかねない。

 重大事件であるほど、少年の生育歴や家族関係の問題性は根深いのが通常である。ところが、少年審判でのやりとりが、表面的に現れた事情だけに基づく形式的なものに流れてしまうと、少年の再非行を防止し成長の支援をはかるために必要な問題を十分に取り上げることができなくなるおそれがある。

 さらに、被害者等が少年審判を傍聴すれば、家庭裁判所としては被害者等の存在を意識し、少年への責任追及に重きを置かざるを得なくなる。現在のように、家庭裁判所が、少年の言い分にも耳を傾けながら、その内面に働きかけていき、その上で、厳しく少年の問題性を指摘し、事件への反省を深めさせ、更生への意欲 を固めさせていくといった審判の営みは極めて困難となる。他方、少年の側からしても、被害者等が傍聴する審判では、心情の安定が保たれず、家庭裁判所からの教育的働きかけもその内面に届かないということになりかねない。これでは、少年審判のケースワーク機能が、著しく減退することになる。

 犯罪被害者の知る権利は、尊重されるべきである。しかし、少年審判を直接傍聴させることは弊害があまりにも大きい。今なすべきことは、関係機関が、記録の 閲覧・謄写等すでにある規定を被害者等が活用する支援体制を整備し、あわせて、犯罪被害者に対する経済的、精神的支援制度を早期に充実させることにあると考える。

 2008年2月27日
 山梨県弁護士会会長 小澤 義彦

 理想と現実(会長挨拶に代えて)

 私たちは、多かれ少なかれ、あるべき理想あるいは望ましい理想と現実のはざまの中で生きていかざるをえない。

 少年時代、そして青年に達する頃までは、理想を追い求めて生きてきたが、世の中の現実をだんだん知るにしたがって、理想はあとずさりを余儀なくされ、理想は少しずつ失われていく。それはいわば大人になることを意味する。

 日本国憲法9条の歩んだ道も私たちの人生に似ているように思う。

 9条は、第2次世界大戦で、国民とアジアの多くの人々の命が失われたことへの反省の中で、おそらくは世界の理想の憲法として誕生した。内容はまさに 青年の理想そのものである。憲法前文は日本の安全について「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して我らの安全と平和を維持する」とし、さらに9条で 「陸海空軍、その他一切の戦力はこれを保持しない」と宣言した。

 2つ合わせて読めば、日本は、軍隊を持たないことを公約し、自国の安全につき、「世界の人々の心」という、不確かで、常に揺れ動き、安定のない、もっとも頼りにできないかもしれない存在に自分の身を託し、丸裸での平和宣言したとも言える。

 それから60年、人生がそうであるように、9条もあるいはそこに内包された理想は、世界の現実の中で変化することを余儀なくされてきた。

 日本は、9条成立時、まったく、戦力を持たないことを宣言したはずだが、それからわずか4年の後、朝鮮半島で起きた軍事的衝突を契機に、警察予備 隊、保安隊、自衛隊と名前を変えながら、今は世界でも有数の戦力を持つに至っている。名前をどう変えようが、今の自衛隊が戦争遂行能力を持った、つまり軍 事力を持った部隊、軍隊であることは疑いのないところだと考える。私たちはこのことをどう考えれば良いのか。私が、学生時代憲法を学んだ30年前は、ほとんどの憲法学者が自衛隊は憲法に違反する、と述べていた。それならば自衛隊は廃止すべきなのか。しかし、現在の世界情勢の中で、諸国民の公正と信義だけに頼って自国の安全を確保するのは少し危うい気がする。国際社会の現実の前では、憲法前文は空想的すぎると批判されるのも理解できる。

 では、自衛隊を正面から認め、さらに世界各地で平和のために自衛隊による武力行使も認める方向での憲法改正をすべきなのか。自衛隊の存在だけを認めるなら現行憲法の解釈でも可能であるからあえて改正の必要はない。したがって、現在の改正論議は、自衛隊の存在を認めることにとどまらず、海外での武力行 使さえ容認できる方向での論議と考えて良いと思われる。これは、日本の海外での戦争への荷担を認めかねない方向での論議である。

 このことがたくさんの命を犠牲にして成り立った憲法の精神に合致するのか。

 戦争は平和の最大の敵であり、人権にとって最強の敵である。戦争のあるところに平和も人権もない。

 憲法改正という道がどこにつながっていくのか。

 私は、最初に理想と現実ということを述べたが、人生とは違い、憲法は理想を追い求め続けてもいいのではないかとも思う。誰かが理想を追わなければ、いつまでたっても世界が平和にならないような気がする。

 武力による平和の確保という道は、イラクの現実を見ても成功しないものではないのか。復讐の連鎖だけが残される。

 理想は現実の前に時に後退を余儀なくされるが、世界の平和については理想を追い続けてもいいのではないか。

 今、それができるのは日本しかない。60年追い求めてきた日本の平和への道。人生なら大人になった年月が過ぎたが、平和への長い長い道を考えれば、まだ憲法は青年期にあると呼んでよいと考える。

 理想を失うにはまだ少し早すぎる。

 理想を失うとき、人は老い、理想を失った国家は衰退する。

 憲法は改正せずに、武力によらない紛争解決への道、平和への道を達成するという理想を、もう少し追い求め続けることが、多くの犠牲者を出し、世界で唯一の原爆の被害者を出した日本だからできる、日本の責任だと思うがどうだろうか。

 いずれにしても難しい問題である。いろいろな観点からさらにこの問題を考え続けたいと思う。

 (注:この談話は、2007年11月10日のシンポの挨拶文と同じです)

 2007年11月10日
 山梨県弁護士会会長 小澤 義彦

 会務は他人(ひと)の為成らず

 1 山梨県弁護士会の歴史と役割

 山梨県弁護士会は、明治26年にその前身である甲府地方裁判所所属弁護士会として発足し、昭和30年に山梨県弁護士会と名称を改め、その歴史は本年で114年目、山梨県弁護士会となって52年目を迎えます。

 この間、弁護士会と私たちの先輩弁護士が常に目指したことは、人権の擁護と社会正義の実現でした。時に、在野の一角として権力と対峙し、また、社会的弱者の救済に助力してきたのも私たちの先輩弁護士が行ってきたことであり、今も連綿として続いていることです。

 正しい者が正しく扱われる社会こそ、私たちが目指す社会だと考えます。正しい者が、弱いが故に、あるいは少数者であるために不当に扱われたり、不平等に扱われ、あるいは虐げられてはならない、これが正義であり、人権擁護であると私は考えます。

 弁護士の活動は、時に極悪人の弁護であったり、少数者の擁護であるため、なぜあんな悪い奴を擁護するんだ、とか、世間知らずであるとか、常識を知らない、などと非難されることもままあります。しかし、これらの者を擁護し、代わりに発言できる者は、弁護士であり、弁護士こそがなすべきことと考えております。弁護士がこのようなことに発言しなくなったら、社会は暗黒の世界に入っていくと思います。暴力や力の強い者が幅をきかせる社会だけにはしてはならないと考え ます。また、多数意見が常に正しいとも限りません。多数意見が感情に流されて誤った行動をしようとするとき、これを止めるのも弁護士の役割と考えます。

 弁護士は、明日の楽しい旅行を皆が考えているときに、事故が起きたらどうしようとか、迷子が出たらどうしようとか、お金が不足したらどうするんだ、とか、暗いこと、悪い事態、問題点ばかり考えているところがあります。しかし、このような人が存在するからこそ、いざと言うときに皆がパニックにならなくてすむし、緊急の事態にも冷静に対応できることになります。弁護士のとかく暗くなりがちな発言は、明るい世の中を作るために必要不可欠と理解していただけれ ば幸いです。

 弁護士の仕事は何かを生産することはありませんが、社会が安心して円滑に活動していくために不可欠な仕事です。この弁護士の活動を支えていくのが弁護士会の活動でもあります。

 2 無償の会務活動こそが個々の弁護士活動の源泉となる

 弁護士会では、1年間に延べ250回前後の委員会が開催されています。ほとんど毎日昼食時間あるいは夕方の時間帯に委員会が開かれ、会員である弁護士は、複数の委員会の委員を掛け持ち、委員会で決定された個々の会の活動(会務と言います)を行います。人権救済の申立があれば現地の確認や申立人の面会に行きます。法教育委員会では、未来を担う子供達のために県内の小学校・中学校・高校に出かけて出前授業を行っています。刑事弁護センターは、日々あるべき刑事事件の弁護活動を研究し、子供の権利委員会は、未成年者の処遇をめぐる問題を取り扱い、民事暴力被害者救済センターは、暴力団に悩まされる人々の救済活動を行うなど、多くの場面で弁護士が活動しています。私は、いろいろな団体に所属してきましたが、こんなにまじめに議論し行動する団体を他に知りません。

 この活動を私たち弁護士会は、誰の援助も受けず行っています。活動の資金は私たち会員が会費を払って維持しています。

 この無償の行動に支えられた会の活動こそが弁護士が社会の信頼を得ている根源の一つだと考えます。弁護士会と弁護士に寄せられた信頼の上に私たちの個々 の弁護士活動も成り立っております。「弁護士さんの言うことだったら聞こうじゃないか」、この言葉を社会から言ってもらうことこそが私たちが守らなければ ならない事柄です。弁護士会はこの社会からの信頼を今後も得ていかなければなりません。個々の会員の皆様は、会務をこなすことは大変でしょうが、どうかそ れは、市民のためになると同時に私たち自身のためになると信じてがんばっていただきたいと思います。

 3 司法への信頼を得なければ私たちの発展もない

 近年の司法の世界は大改革が行われています。昨年業務を開始した日本司法支援センターへの協力、2009年に開始される裁判員制度の円滑な実 現に向けての活動、国費による被疑者弁護の拡大、法科大学院の設置と大幅な法曹人口の拡大など、弁護士会を取り巻く状況はめまぐるしいものがあり、その対応に追われていることも事実です。これも弁護士会をあげて取り組んでいかなければならないことです。ことに裁判員制度は、司法に一般の方々が本格的に参加 する初めての制度と言ってもよく、国民主権、司法への国民参加の実現のためにも、法曹界をあげて成功させなければならない制度と考えます。個々の事件では、時に検察官と戦うことは当然です。それは真実発見のためにどうしても必要なことだからです。しかし、制度としての裁判員裁判は法曹三者が協力して成功 させなければなりません。アメリカの陪審制度も参加したほとんどの人が「参加して良かった」との感想を持っていると聞いております。日本でもきっと参加した人は参加して良かったと述べると思いますし、また、そのような制度に育てなければなりません。これは裁判所・検察庁・弁護士会だけでなく、司法に関わるすべての人に課せられた大きな責任だと考えます。国民の司法への信頼を失ってしまっては、法治国家は成り立ちません。

 これから、この1年山梨県弁護士会の歴史に恥じないよう努力する所存です。是非皆様のお力添えをお願い申し上げます。

 2007年6月5日
 山梨県弁護士会会長 小澤 義彦

 「ゲートキーパー立法」に反対する会長声明

 山梨県弁護士会は、不動産の売買等一定の取引に関し「疑わしい取引」を警察庁に報告する義務を弁護士に課するゲートキーパー立法に反対する。

 1.弁護士に対するゲートキーパー制度は、犯罪収益やテロ資金の移動に利用されうる金融取引に関し、代理人や助言者としてその執行に関与する弁護士を取引の門番(gatekeeper)と位置づけ、犯罪収益の洗浄(マネー・ロンダリング)やテロ資金の移動を見張らせ、そのような疑いのある取引の報告をさせる等の規制をすることにより、これらの犯罪行為を抑制しようとする制度である。

 2.2003年6月、FATF(国際的なテロ資金対策に係る取組みである「金融活動作業部会」の略称)は、マネー・ロンダリング及びテロ資金対策を目的として、従前から規制の対象としていた金融機関に加え、弁護士等に対しても不動産の売買等一定の取引に関し「疑わしい取引」を金融情報機関(FIU)に報告する義務を課すことを勧告した。

 これを受けて、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、2004年12月、「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、その中でFATF勧告の完全実施を決定した。

 そして、2005年11月17日、政府は、FATF勧告実施のための法律整備の一環として、金融情報機関(FIU)を金融庁から警察庁に移管することを決定した。

 3.しかし、弁護士に対するゲートキーパー制度は、市民の弁護士に対する信頼や弁護士自治を侵害するものであり到底容認できない。

 弁護士は、国家権力との対抗の中で市民の人権を擁護することを職責としており、職業的秘密の原則は、このような職業の本質に根ざすものである。政府又は政治権力から独立していること (弁護士自治)は、弁護士が人権を擁護し、社会正義を実現するための基盤なのである。守秘義務は、この基盤を支える義務であり、国民の弁護士制度・司法制度への信頼の基礎となっている。このことから、弁護士は、職務上知りえた秘密を保持する権利を有し、依頼者に対しては高度な守秘義務を負っている。これは、市民の側からすると、秘密のうちに弁護士と相談することができる権利を保障されているということにほかならない。しかし、「疑い」だけで弁護士が依頼者の秘密を「密告」しなければならないとしたら、依頼者は安心してすべての事実を弁護士に告げることはできないし、弁護士が依頼者に対して法律を遵守するための適切な助言をすることもできない。ゲートキーパー制度は、国民の弁護士制度・司法制度への信頼の基礎を崩壊させてしまう危険性がある。

 4.特に、金融情報機関(FIU)が金融庁から警察庁へ移管され、警察庁に対し報告を義務づける制度は、弁護士・弁護士会の存立基盤である国家権力からの独立性を危うくし、弁護士・弁護士会に対する国民の信頼を損ねるものであり、弁護士制度の根幹をゆるがすものである。

 5.ゲートキーパー立法は、弁護士制度ひいては司法制度そのものに対する国民の信頼を根底から覆すものであり、国民にとって余りにも失われるものが大きいと言わざるを得ず、到底容認できない。
ここに、当会は、国民の理解を得ながら、日弁連とともに反対運動を展開して行くことを決意する。

 2006年2月24日
 山梨県弁護士会会長 田中 正志

 代用監獄の廃止を求める決議

 1.警察署内に設置されている留置場は、本来被疑者を司法当局に引致するまでの間一時的に留め置く場所であり、被疑者を勾留すべき施設ではない。

 被疑者を勾留すべき施設は捜査当局から独立した施設でなければならず、被疑者の勾留を捜査に利用することがあってはならないことは、国際人権規約委員会などの国際機関によっても確認され、かつ国際人権規約にも明記されているとおり、近代刑事司法の大原則である。

 2.そうした大原則に逆行し、代用監獄を恒久化させる内容の「拘禁二法」案が1982(昭和57)年4月、国会に提出された。

 日弁連は全力でこの法案を廃案とするための運動に取り組み、当会においても他会に先駆けて臨時総会を開催したうえで廃案にするための総会決議を採択し、市民集会を開催し、駅頭宣伝活動、弁護士デモ等の反対運動を続けてきた。こうした国民運動の力によって同法案は1983(昭和58)年11月に廃案となった。
その後も1987(昭和62)年4月、1991(平成3)年4月に提出された第2次、第3次拘禁二法案も同様に廃案とされた。

 警察庁、法務省は三度廃案とされた事実を重く受け止め、虚偽自白の温床となってきた代用監獄の存続を断念し、被疑者の勾留場所を拘置所とするための施策を考えるべきであった。

 3.しかるに、今般、代用監獄を恒久化するための法案が通常国会に提出されようとしている。しかも今回の法案には代用監獄の存続を是とする有識者会議の意見が付されている。情勢は極めて緊迫していると言わざるを得ないものである。

 警察庁舎の建て替え等によって留置場の内容が近代化されたとしても、捜査側の手元に身柄を留めるという代用監獄の本質にはいささかの変化もないのである。

 昨年9月に再審開始が決定された布川事件(1967年8月に発生した強盗殺人事件、自白のみを唯一の直接証拠として二名の被告人に無期懲役が言い渡されていた事件)、真犯人が見つかって窃盗罪等が無罪となった宇和島誤認逮捕事件など代用監獄が虚偽自白の温床となり、えん罪を生んでいる例は現在においても枚挙にいとまがないのである。

 当会は、代用監獄の存続を是とするあらゆる立法に反対し、代用監獄の廃止を強く求めるものである。

 2006年2月24日

 共謀罪の新設に反対する会長声明

 衆議院解散により一旦廃案となっていた「犯罪の国際化並びに情報処理の高度化に対処するための 刑法等の一部を改正する法律案」は、昨年10月4日付けで第163回国会(特別会)に再度上程された後、 継続審議となっていたので、本日、第164回国会(常会)が召集されたことにより、この国会で審議されることとなった。

 この法案の中には「共謀罪」の新設が規定されている。

 「共謀罪」は、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、 5年以下の懲役または禁固もしくは、2年以下の懲役または禁固に処するというものである 。

 共謀罪は、「国際的な犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「条約」という。)の批准のための国内法を整備するために上程されたものであるが、条約は、国際的テロ行為を防止することを目的としたものであり、第3条において「性質上越境的なもの」との限定が加えられているのに対し、国会で審議される共謀罪については、かかる要件が欠けているため、他の600以上の国内犯罪にも適用される虞がある。

 また、「犯罪の共謀を行った者の一部が実行に着手した場合にのみ、他の共謀者にも犯罪が成立する。」という共謀共同正犯理論が我が国の確立した判例理論である。

 しかし、共謀罪は、実行の着手、予備行為さえも不要とし、犯罪実行の意思の合致のみで処罰が可能となり、共謀共同正犯理論に反するだけでなく、株式会社、NPO、宗教法人等あらゆる団体の活動が処罰対象となり、刑法の自由保障機能を形骸化させ、思想・良心の自由、表現の自由、結社の自由といった基本的人権が侵害される虞もある。

 条約第5条第1項には、「国内法上求められるときは、その合意の参加者一人による当該行為の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」と規定されているが、共謀罪においては、まったくこの点が欠落しており、条約批准に便乗して国家による個人のプライバシーへの干渉を強化しようとするものである。

 以上のように、共謀罪は、明確性の原則、自由保障機能といった刑法の大原則に反し、その適用範囲、処罰対象が必要以上に拡大された結果、国民の基本的人権に対して重大な影響を与えるものであって、当会としては、これに断固反対の意思を表明するものである。

 2006年1月20日
 山梨県弁護士会会長 田中 正志

 5月度会長談話

 会長に就任して1ヶ月が経過しました。今回は会長の1ヶ月をご紹介します。

 各会の会長は、日本弁護士連合会(通称:日弁連といいます)の理事に選任されます。
また、山梨県弁護士会の会長は、関東弁護士会連合会(通称:関弁連といいます)の理事にも選任されます。

 従いまして、山梨県弁護士会の会長は、山梨県弁護士会の会務を担当するとともに、関弁連の理事会と日弁連の理事会に出席し、その運営方針等を決定します。

 4月は、新執行部が就任したばかりですので、行事が盛りだくさんです。

 4月4日
 会長・副会長が就任のあいさつ回り
 裁判所、検察庁、県、甲府市など関連各団体を回りました。
 5日
 関弁連理事会
 理事長ほか、就任のあいさつ回り
 最高裁、東京高裁、東京地裁、最高検、東京高検、東京地検などの関連団体を回りました。
 6日
 委員会(司法改革センター)
 7日
 弁護士会への受け入れ文書の確認・検討
 委員会(消費者委員会、日本司法支援センター委員会)
 9日
 常議員会 *弁護士会の運営等の審議・決定機関です。
 市民講座・無料法律相談会
 12日
 委員会(法律扶助運営委員会)
 13日
 弁護士会への受け入れ文書の確認・検討
 弁護士会全員昼食会(会務報告)
 14日
 委員会(法律相談委員会、総務委員会)
 15日
 日弁連理事会
 16日
 日弁連理事会
 19日
 弁護士会への受け入れ文書の確認・検討
 委員会(法教育委員会)
 21日
 委員会(日本司法支援センター委員会、広報委員会)
 25日
 委員会(修習委員会)
 26日
 関弁連理事会
 関弁連役員披露宴
 27日
 弁護士会への受け入れ文書の確認・検討
 委員会(子どもの権利委員会)
 山梨県弁護士会役員披露宴
 28日
 委員会(図書コンピューター委員会、刑事弁護センター)
 会長談話発表

 これらの行事をこなすほか、5月の行事の計画・準備、活動方針に基づいた会務の計画・実行などを日々行っています。

 4月5日に関弁連理事として就任のあいさつ回りをしたときは、最高裁長官、最高検検事総長など各団体の長に対応していただき、感激すると同時に自らの立場の重さを実感しました。

 4月9日の市民法律講座・無料法律相談会は、本年度第1回目です。

 遺言の日(4月15日)を記念して、また、高齢者・障害者支援センターを平成17年3月に設立したことを記念して、遺言、相続に関連した市民法律講座と無料法律相談会を開催しました。

 市民法律講座の講師は、花輪仁志弁護士が担当しました。相続、遺言、遺留分などを具体的な事例を交えて説明がなされました。

 やさしく、穏やかな語り口調で、参加者からは分かりやすく、勉強になったとの感想が聞かれました。
また、多くの質問がなされ、講師と参加者、参加者間においても一体感があった講座でした。

 市民法律講座と無料法律相談を同日に連続して開催するという初の試みで、両方とも参加した方も多く、法律知識が得られ、また具体的な問題の解決もはかれたと好評でした。

 当日は晴天で、春爛漫、桜も満開で、信玄公祭りが行われるところであり、絶好の行楽日和であったにもかかわらず、市民法律講座に26名、法律相談会に17件の参加がありました。

 4月27日の山梨県弁護士会役員披露宴は、甲府地方裁判所所長、甲府地方検察庁検事正ほか県内の関連各団体の代表や関係者をご招待し、山梨県弁護士会の会長・副会長・監事の役員を披露するものです。ここでは会長が本年度の活動方針などをあいさつをします。弁護士会の活動を理解していただく大切な機会と言えます。毎日、会務に追われ、過ぎてみればアッという間の1ヶ月でした。毎日が分刻みのスケジュールで、睡眠時間を削ってなんとかこなしているという感じです。5月の山梨県弁護士会の市民向け予定5月14日に第2回市民法律講座・無料法律相談会を弁護士会館において開催します。 午後1時30分から永嶋実弁護士による「少年犯罪の現状と少年法」の講座があります。午後3時からは弁護士10名による無料法律相談を実施します。ぜひ、ご参加ください。

 2005年5月13日
 山梨県弁護士会会長 田中 正志

 除名処分についての会長声明

 当会は、会員関一に対し除名を命ずる旨の平成17年1月24日付当会懲戒委員会議決を受け、同年2月10日その旨処分を決定し、同月17日同会員に対して書面をもって告知しました。

 当会の規程によりますと、懲戒処分は告知の書面(懲戒書)の到達をもって効力を発しますので、平成17年2月17日をもって同会員は弁護士資格を喪失しました。

 同会員の行為は、弁護士法第1条第2項に定める職務に関する誠実義務に違背することはもちろん、何よりも破産管財人の社会的信頼を損ない、かつ同会員が当会会長を務めた者であることから当会はもとより弁護士全体の信用を大きく失墜させたものであって、同会員の責任は極めて重大であると判断し、懲戒処分中最も重い除名を選択したものであります。

 今後は、明後日甲府地方裁判所において第1回が開かれます同会員の公判を見守りながら、その動機、具体的な行為、態様等公判で明らかにされる事実を見極め、二度と再びこのようなことが起こらないよう会を挙げて検討してまいる所存です。

 2005年2月21日
 山梨県弁護士会会長 水上 浩一

 司法修習生の給費制堅持を求める声明

 当会は、2003年(平成15年)10月4日、「司法修習生の給費制維持を求める会長声明」を発した。

 しかるに、司法制度改革推進本部法曹養成検討会は、本年6月15日、給費制に代えて平成18年度から貸与制を導入するとの取りまとめを行った。極めて遺憾なものと言わざるを得ない。

 戦後、国民主権の下、新しく発足した司法制度の中で、司法修習制度は、法曹養成の一元化を実現するとともに、給費制を採用し、単なる職業人ではなく、国民の権利擁護、法の支配の実現を実践するプロフェッションたる法曹を養成してきた。司法修習を終えた弁護士は、裁判官や検察官と同様、基本的人権の擁護と社会正義の実現の担い手として高い公共性と公益性を国民から期待され、この期待に応えるべく、職務上のみならず公益活動など多くの分野で絶え間ない努力を重ねている。

 給費制を廃止することは、国民に最も身近な法曹である弁護士に対する公共性と公益性の期待を放棄することになりかねない。この点は貸与制によって代替することができないものであり、これによって生じる国家的、社会的損失は極めて大きいものがある。

 また、貸与制によって司法修習生の修習専念義務が確保できるかも問題である。貸与金は基本的には返還しなければならないから、司法修習生が将来の返還債務の履行を考えたとき、果たして修習期間中安んじて修習に専念できるか疑問だからである。

 法曹養成制度が変わり、法科大学院での修学に多大な経済的負担を要するようになった。これに加えて司法修習中の貸与金を返還しなければならないとすれば、経済的な弱者は法曹への道を閉ざされることにもなりかねない。少なくとも、法曹としての出発が多額の債務を負担してのものとなる場合が多くなると考えられ、修習生がその軽減のために弁護士に課せられた社会的公共的使命よりも、より待遇の良い法律事務所を事務所選択の基準としていくことも予想される。そのような事態は司法の利用者たる市民・国民にとって決して歓迎すべきものではない。さりとて、その対策として一定の範囲で貸与金の返還免除措置を導入することは、導入の条件・方法如何では任官者に対する返還免除に繋がり、法曹における官と民の二分化を招来するものであって到底認めることはできない。

 国には司法制度改革を実現するために必要な財政上の措置を講じることが義務づけられているのであって、財政的事情から司法修習生の給費制を廃止することは本末転倒である。

 よって、山梨県弁護士会は、あらためて給費制の廃止に強く反対するものである。

 2004年8月10日
 山梨県弁護士会会長 水上 浩一

 自衛隊のイラク派遣の中止を求める会長声明

 当会は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し、既に派遣された自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求める。

 確かに、イラクの現状を見ると、国際的復興・人道支援が必要とされ、求められていることは十分理解しうるものであるが、同支援は国連を中心とした枠組みのもとで、非軍事的な分野・手段で行われるべきであり、かつ、イラク国民が真に期待し要望するものでなければならない。

 今回の自衛隊のイラク派遣は、国連のPKO活動に対する協力としてなされるものではなく、国連の要請もイラクの同意も存しない。イラクでの自衛隊の活動は、米英による侵攻の戦後処理としての占領行政に対する協力にほかならない。しかも、この米英によるイラク侵攻は、国連憲章に反するとの指摘の中で、イラクの保有する大量破壊兵器等の危険性排除を理由として開始されたものであるにもかかわらず、大量破壊兵器等は発見されておらず、米英の主張した正当性も失われ、その国際法上の違法性が明らかになりつつある。

 今回の自衛隊イラク派遣の根拠であるイラク特措法の基本原則は、「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」というものである。しかし、現在イラクでは、全土で連日のように、米兵等の軍事関係者のみならず国際機関職員や外交官さらには一般市民にまで攻撃が加えられ、多数の死傷者が出ている。米軍も認めるとおり、「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域」であり、安全な「非戦闘地域」などが存在しないことは明らかであって、今回の自衛隊のイラク派遣は、イラク特措法にも違反するものである。また、そもそもこのイラク特措法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を容認することにつながるものであり、国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きい。

 自衛隊のイラク派遣は、上記のとおり米英の占領行政に対する協力としての性格をも担うものといえ、そのため、派遣された自衛隊が、米英軍の協力者として攻撃目標となり、戦闘に巻き込まれて武器を使用する事態が起きることは回避できない状況にある。これは、自衛隊員に死傷者が出るだけでなく場合によってはイラク国民にまで危害を及ぼす事態となることを重く受け止めるべきである。「テロに屈してはならない」「汗を流す必要がある」との掛け声のもとに、若い自衛隊員の尊い生命が犠牲とされること、また自衛隊の武力行使によりイラク国民に犠牲者を出すことは、決して容認できない。今回の自衛隊派遣は、イラク特措法が懸念した事態を引き起こし、憲法が禁止している自衛隊による武力行使という事態を招く危険性を強く有するものである。

 よって、当会は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し、既に派遣された自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求めるものである。

 2004年2月27日
 山梨県弁護士会会長 深澤 一郎

投稿日: 2018年1月31日